ベトナムのクリスマス商戦 顧客満足のために多様化

クリスマスシーズンがベトナム社会に定着し、この時期の消費が増えるのに伴い、多くの企業があの手この手で〝顧客満足〟を追求している。今年は本物のツリーなど高級商品が登場した一方で、ベトナム産商品の品ぞろえも大幅に増えるなど、クリスマス商戦が活性化を見せている。

写真㊤=オレゴン州から輸入されたモミの木のクリスマスツリー

◇米国直輸入の高級ツリー
ホーチミン市のある企業は今年、約200本のクリスマスツリー用の本物のモミの木を、米国のオレゴン州から輸入した。この会社を経営するディエップ・グエン氏によると、去年たった2本だけ輸入したモミの木が昨年のクリスマスに大きな反響を呼んだことから、今年の大量輸入に踏み切ったという。

「8月にはすでに注文をしなければならないなど、輸入手続きはとても複雑だったが、業界団体である米国クリスマスツリー協会の支援もあって実現した」とグエンさんは語った。

人気は上々で、モミの木を乗せた船がホーチミン市に入港する前に、すでにツリーの約半分はオンラインで予約注文が入っていたという。これらのツリーは、1.8~2.7メートルほどの高さで、価格は大きさによって1本300万~800万ドン(約130~350ドル)。購入者のほとんどは、外国人やベトナム人富裕層だった。

本物のモミの木はまだ限定的な顧客向けだが、手軽なプラスチックのクリスマスツリーは品ぞろえが増え、全国どこのショッピングモールでも手に入れることができるようになった。商品も多様化し、さまざまな色や大きさで、飾りなども目を引くものがどんどん出てきている。

ホーチミン市5区のルオン・ニュー・ホック通りやハイ・チョン・ラン・オング通りにあるクリスマス関連商品のショップは、10月半ばごろからすでに繁忙期に入っていた。

同市ルオン・ニュー・ホック通りに店を構えるホー・チー・ミン・タムさんは、今年初めてタイからプラスチック製のツリー20本と約1000個のボール状の飾りを仕入れたところ、すべて1週間以内に売り切れたという。

タムさんによると、これらの商品が消費者を引き付けたのは、これらが同様のベトナム製品とほぼ同額かやや安いくらいの価格だったからだという。過去2年間で、タイから輸入されたクリスマス商品や飾り類が、ベトナム市場で存在感を増しているという。

一方で、ハイ・チョン・ラン・オング通りで商店を営むホー・キム・クックさんは、さまざまな企業のオフィス飾り用にレンタルするサービスを考案した。今年は、15本の大型クリスマスツリーを、通常の市価の販売価格の3分の1程度の約200万~400万ドン(87~175ドル)の料金で貸し出すという新しいビジネスモデルを開拓した。

◇ベトナム製品の拡大
今年のクリスマス商品の特徴は、地元ベトナムのメーカーの参入が顕著だということだ。ハイ・チョン・ラン・オング通りのクリスマス商品店「キムラップ」の代表者によると、1-10月に同店で扱った約6000点の商品のうち、ベトナム製が3分の2にのぼったという。

ベトナム製のクリスマス商品の品ぞろえと数の増加は、〝クリスマス商戦〟の市場ポテンシャルに気付く地元企業が増えていることの表れだ。その可能性に気づいた企業が努力を重ね、商品の品質とデザインの向上にも結び付いている。

ルオン・ニュー・ホック通りのグエン・フオン・タオさんの商店では、10社のベトナム企業が製造しているクリスマス衣装約6000点を扱う。「デザインは20種類もあって、価格は輸入物よりも10~20%安価。これが、消費者がベトナム製品に引き寄せられる理由だ。数千点あったクリスマス衣装は、ほとんど完売です」と話す。

紙製品製造の「ドーマ・ヴィーナ」のヴォー・ホン・タン社長は今年のクリスマスシーズン向けに2000種以上の商品を発売した。売れ筋商品は、サンタクロースとベル付きのクリスマスツリーだったという。

◇配達のサンタクロース・サービスも人気
子どもたちに贈り物を届けてもらうサンタクロース・サービスは、今年も人気が高く、利用者は年々増加している。10区のギフトショップのオーナ、ゴ・ティ・フオン・ロアンさんの店では、配達の希望をさばくため、〝サンタクロース〟をクリスマスの1カ月も前から雇わなければならず、サンタの人材不足が生じているという。

ロアンさんは、ホーチミン市内のサンタによる配達サービス料金は、一般的に15~20%値上がりしている印象だという。昨年は9万~10万ドンだったが、今年は12万~13万ドンが相場。

「といっても、その値段で配達サービスが受けられるのはクリスマスの数日前までです。クリスマスイブの前夜なら16万ドン、イブ当日なら20万ドン以上に跳ね上がります」とロアンさんは説明する。

〝サンタクロース〟として雇用されるのは、ほとんどが学生だ。ホアン・トゥアンさんは、ホーチミン市社会人類学大学の学生になってから数年間、〝サンタ〟を兼業しており、今年もこの仕事に登録した。だが、この時期は、学生も学期末試験に備えねばならない時期で、人材不足が顕著だという。

この仕事でもっとも厄介なのがホーチミン市の交通渋滞だ。「顧客は子どもたちのための贈り物を時間通りに玄関口に届けてもらいたいのです。ぼくも、このお祭りの時期に交通渋滞の問題でお客さんを不愉快にしたくはありませんから、贈り物を届けに遠い距離を移動しなければならない時には、神経を使いますね」と話して仕事に向かった。