CNNで紹介された〝暴言めん店〟に強制閉店を警告

ハノイ市は、一部の飲食店などで見られる店員の暴言や横柄なふるまいなどを、「ハノイ市のイメージを損なう」として取り締まることにした。米国の放送局、CNNで偶然放映された、客を罵る飲食店店主の反響が大きかったためで、市当局が暴言や横柄な態度での集客に待ったをかけたかたちだ。

競争の激しい飲食業界では、顧客の注目や興味を喚起するために、それぞれの店が自店の〝売り〟を作ろうと躍起になっている。不思議なことに、ハノイではその〝売り〟が「客に対する横柄な態度や暴言」だと考える数々の店があるようで、さらに不思議なことに、実際にそれらが集客効果を上げている。

しかし、このような横柄な飲食店主らの振る舞いを話題として持てはやす風潮に、ハノイ市当局は「まった」をかけた。「店主や店員が客に向かって怒鳴ったり、罵ったりする飲食店は、強制的に閉店する」との政令を発令し、市内の全飲食店向けに警告したのだ。

「飲食客に攻撃的な行動をとる飲食店があれば、経営者の許可証をはく奪する」とした政令について、市当局は、「ハノイ市のイメージを損なう行為をする者は、容赦はしないという考えの表れだ」と説明した。

ゴ・シー・リエン通りにあるいわゆる〝暴言めん料理店〟と呼ばれる店がそれで、この店のいつも怒っている店主は、ハノイではすでに有名人だ。しかし、米国のオバマ大統領とブンチャー店を訪れたことでも知られる料理研究家、アンソニー・ボーダン氏が数ヶ月前、米CNNの番組「パーツ・アンノウン」の収録で訪れたことで、この店の悪評が世界中に広がってしまったのだ。

番組は、ボーダン氏が豚骨入りスープ春雨や豚タンとタロイモの茎を使った一皿などのベトナム料理を味わいながらの地元市民らとの触れあいを伝える内容で、昨年の秋に放送された。この一場面で、この店の女店主、ハン・キム・タオさんが、注文にもたついたり、店のメニューにないものを頼んでしまったりする客に対して、大声で罵る姿が映し出された。

ひき肉の料理を頼んだ客に対して、「うちにはないよ!ひき肉が好きなら市場へ行きな、あそこならたくさんあるだろうよ!」と怒鳴ったうえに、「一番いいのはさっさと家へ帰って、家で(食べたいものを)食べることだよ!」などと客に怒りをぶちまけたのだ。この放送が世界中で思いがけない反響を呼んだ。

タオさんは地元メディアに、「今後は、言葉を慎みます」と反省を伝えたという。
「私は普段は愛想がいいんですよ。ただね、昼どきの店が混んでいるときに、変な注文をするお客さんがいると、つい、苛立って口悪くなってしまうだけなんです」とタオさんは弁明する。

同店のめん類はおいしいと評判であるが、一方で「二度と行かない」とベトナム人の中でも立腹している客がいるのも事実。海外観光客の誘致においてベトナムの味は欠かせない魅力の一つであるだけに、観光促進に力を入れるハノイ市が今回、強制閉店の警告という強硬手段に打って出たようだ。