老朽化住宅の住民、2020年までに移転へ ホーチミン、ハノイ市で再開発計画

ホーチミン市やハノイ市など、ベトナムの都市部で、住宅の老朽化や街のスラム化が深刻な問題となっている。ホーチミン市当局は、運河沿いの老朽化住居や違法増築物の密集地を、2020年までに解消し、住民を新たな公共住宅へ移転させる計画を打ち出した。

写真㊤=老朽化した住宅密集地(ホーチミン市8区)

ホーチミン市で老朽化した家屋や建物が密集するのは主に4区、7区、8区と郊外のビンタイン地区。運河沿いの老朽化住宅は半世紀以上前から存在しており、約10万人が、倒壊危険がある建物に、不衛生な状況で暮らしているといわれる。これらの住宅は古い建設材などで簡易に、時に違法に建てられたもので、いずれも劣化が激しい。スラム化の一因には、一帯の住民のほとんどが定職につけておらず収入が安定しないという社会的背景もある。

ホーチミン市8区人民委員会のレ・クイン・ダイ副委員長は、「8区は特にスラムが集中し、1000軒以上もの住宅でトイレなどの衛生設備が無く、環境的にも汚染された地区に住宅がある」と説明する

同区が住民の意識調査を行ったところ、ほとんどの住民が「地区にとどまりたい」との意思を示した。だが、住民らの収入は低く、現存の近隣住宅の家賃を支払うことはできない。これが、問題を複雑化させている。

ホーチミン市では8区のドイ運河沿いの約75ヘクタールの土地の再開発に着手し、約2万人が生活する20-25階建ての集合住宅建設を建築するマスタープランを策定中。敷地の約半分は緑地や公共的な空間、都市再開発に充てるという。

ホーチミン市人民委員会のレ・バン・ホア副委員長は「市では、投資家や企業に、現在スラムに居住している住民のための新たな住宅建設を呼び込みたい。複数の企業が地区の再開発プロジェクトに関心を示し、12兆ドン(約5億4000万ドル)の投資の提示もあるが、さらに資金が必要だ」と話す。

計画実現のために、市は所有するすべての公共地の利用を検討するほか、ODAの活用や海外からの投資家の呼び込みなども検討しているといい、ホア副委員長は「全世帯を移転させ、住む場所を失う人がないようにする」と決意を述べる。

市ではすでに39件の公的住宅建設計画を進めており、2020年までには3万世帯が完成の見込み。だが、これでは移転できる世帯数が4万7000世帯とみられており、まだ十分ではない。

公的住宅は、購入できる世帯が優先的に入居できるシステム。20%の頭金を支払った残りは分割支払いも可能で、購入資金がない場合は賃貸での入居となる。

ホア副委員長によると、地下鉄駅の近くの地区では建物の建ぺい率を緩和したり、逆に水路や港の近隣地では地下水の湧水や洪水を避けるために建築物を減らすなどの対応を取りながら再開発計画を進め、今後、民間の投資を募っていくという。

同じく老朽化した住宅の問題を抱えるハノイ市でも、ハノイ市人民委員会が今後4年間をかけて、老朽化したアパート群れの改築や再建を含む街の再開発を進める計画だ。


ハノイ市の老朽化したアパート。あちこちで違法な増築が行われている

市建設局では、路上につきだすように増築して泥棒よけの鉄柵をつけたいわゆる「トラの檻」と呼ばれる違法増築部分の撤去に始まり、老朽化した住宅を解体して新たな集合住宅群を建設する計画。各関連機関と調整して検討し、来年7月までには、市議会の党委員会に再開発計画の概要を報告するという。