真っ赤なトサカに黒と白の羽毛、赤い目…。華やかな姿から〝王家のニワトリ(ロイヤル・チキン)〟と呼ばれるトリが、縁起物として人気を呼んでいる。「クィ・フィ・チキン(Quy Phi chicken)」という欧州生まれの品種で、トサカの形が仏様の手に似ていることから、ありがたい贈り物としての需要も高いという。養鶏業者のトラン・フイ・ホイさんは、養鶏場の拡大を計画中で「地元経済の活性化に貢献したい」と話している。

失敗を乗り越え
新年のお祝いムードが続くなか、北部のフンイエン省トン・ファンに立地するホイさんの養鶏場は今、ニワトリの出荷に向け、あわただしい雰囲気に包まれている。すでにニワトリのほとんどが売約済みという。酉年の今年は、食用だけでなく祝日などのお祝いの日の贈答品として、またペットとしての引き合いも多いという。

ホイさんが初めてこのニワトリを知ったのは、南ベトナムに旅をした2010年のことだ。見た目の美しさに加えて、病気に強く、肉の味がよく、さらに栄養価も高いことを現地の飼育業者から聞き、自分も飼育してみようと思うようになった。

地元に戻ってから調べたところ、北部の養鶏所では飼育していないことがわかった。そこで、再度南部に行き、70羽のヒナドリを10億ドン(約500万円)で購入。半年後には、メンドリが繁殖を始め、他のニワトリよりも1.5倍のペースで卵を産み始めた。最初の卵はいっせいに孵化し、高い孵化率を記録した。

しかし、それからは失敗の連続だった。最初に孵化したヒナは4~15日で死んでしまい、わずか3カ月間で4億ドン(約200万円)分以上の1000羽近くのヒナを失った。この痛手を教訓に、再度研究を進め、適切なエサのやり方や温度管理に関する情報をインターネットなどで検索。早期にヒナが死ぬのを食い止めることができた。

その後、事業を拡大し、食肉用と飼育用に販売を開始。現在、養鶏場では卵の生産用に1500羽を飼育している。各地の市場にも進出し、ハノイ市やバクニン省、ハイズオン省、ハイフォンに供給。南部進出の足掛かりとして、ビンフォック省にも支店を置いた。また、普及のために各地のレストランを回り、店の人たちに無料で試食してもらい、調理法も紹介している。

ニワトリは、トサカのサイズによって値段に、80万~300万ドン(約4000~1万5000円)の幅がある。蹴爪が6個以上のトリはさらに高い値段がつき、8~9つの蹴爪になると1羽1億ドン(約50万円)で売られることもある。食用の場合は25万~30万ドン(約1200~1500円)が相場という。

ホイさんにとって、養鶏は単に収入を得る手段にとどまらない。今や人生を豊かにしてくれる原動力になっている。「養鶏場のニワトリを見ているだけで、その鳴き声を聞いているだけで、うれしくなる」と話す。

さらに事業拡大へ
ホイさんは現在、約20億ドン(約1000万円)をかけて3000羽のニワトリと野生のキジ、アヒルを一緒に育てる8㌶の養鶏場を計画中だ。巨大プロジェクトとまではいかないが、消費者に安全なトリ肉を提供することで、地元で信頼のあるブランドを構築したいと思っている。

飼育方法は何も特別なものではなく、世話や養鶏場内の衛生管理、ヒナの選択、病気の予防という面では他の種類の場合と同じだ。ただ、清潔な育成環境には十分注意を払わないといけないという。

ホイさんの場合、自分の畑で栽培しているコメ、トウモロコシ、サツマイモの芽などをエサとして与えている。自作の農作物を使うことで、肉の安全性を確保するとともに、節約にもなっているという。

王家のニワトリの養鶏は北部では初の試みとして注目度も高い。ホイさんは「今後は、このニワトリの普及を支援し、地域経済活性化に貢献したい」と張り切っている。