ベトナム名物の編笠を守れ 伝統のノンラー作り継承

日本の編笠にも似たベトナム名物の円錐形の帽子、ノンラー。木の葉で編んだ風情あるこの伝統品を守ろうと、地域の人たちが今も伝統の製法を続けている。

ハノイのタインオアイ県チュオン村のノンラー作りには長い歴史がある。ノンラーは村人の生活を支える大切な産業で、ファン・チ・ホアさんは約60年間、様々なスタイルの帽子を作っている。

ノンラー作りは、ち密な作業の連続だ。材料はヤシの葉、縫い糸、竹の骨組み。出来ばえを左右するのが骨組み作りで、加工しやすいように水にひたして組み上げていく。竹の骨組みは、耐久性の点からも大切な部品で、この工程が最も難しい。

湿度にも左右され、湿度の高いときは葉が柔らかくなるため作業も楽だが、乾燥すると葉が固くなって加工しにくくなる。ホアさんよると、村人のノンラー作りを習得、一部の熟練者は、より高い技術が要求される縁に飾りのあるタイプの帽子を作ることができる。

価格はオーソドックなスタイルものが3万~8万ドン(約140~390円)、飾りのついたタイプが10万~12万ドン(490~590円)。近年は工業生産の発達により、過酷な価格競争にさらされるようになった。こうした問題を抱えながらも、チュオン村の人々は伝統産業を継承。ホアさんのような年配の職人だけでなく、若い職人も育っている。

同村のグエン・チ・イェンさんは、両親から帽子作りを教わった。その両親もまた、代々親からノンラーの作り方を教わってきたという。イェンさんは今、妹とともに帽子を作っている。ホアさんやイェンさんをはじめ、村では子供から高齢者まで、幅広い世代の人が帽子作りに携わり、家計を支えている。

イェンさんは村で数少ない飾り付き帽子を作ることができる若い職人だ。高い技術が要求される仕事だが、この仕事を愛しているという。「このタイプの帽子を作ることができる村人は少ないが、自分はなんとか習得することができた。技術を発展、継承し、後進にも伝えていきたい」と話している。

チュオン村で作られたノンラーはベトナム文化を代表する工芸品として、多くの展示会に出展されている。ベトナム工芸村協会のル・デュイ・ダン会長は「手作りのノンラーや飾り付きの帽子は見直されつつある。この傾向はベトナム、特にチュオン村にとって明るいニュースだ」と話している。