輸出用バナナを国内販売 量販店の措置が生産地救う

 生産と流通を結びつけるねらいの「ベトナム製品購入キャンペーン」が、思わぬかたちで産地を救った。3月、ドンナイ省の大量の完熟バナナが、予定していた輸出を断られたのだが、流通業者らが急きょこれを買い取り、国内で販売してくれたのだ。おかげで、産地は大損害を免れたという。


ドンナイ省の完熟バナナの救済に重要な地位を占めた大手量販店Big C

ドンナイ省の農家が、何トンもの完熟バナナを廃棄するか、あるいは家畜のエサとして安価で放出するかとの選択を迫られる事態となったのは、今年2月の末ごろのことだ。この時期、バナナの卸売価格は数年前までの1キロあたり1万4000ドンから、1キロあたり1000~2000ドンにまで急落していた。原因は、それまで大量にバナナを輸入していた中国が、自国でのバナナ生産が回復したことを理由に、突然、輸入を打ち切ったからだった。

事情を知ったタイ系大手スーパーのビッグCは、3月1日以降、産地や卸売業者らが損失を被らないよう、利益を度外視し、1キロ約5900ドンでバナナを購入し続けた。バナナは自社が運営するスーパーの店頭で商品として販売し、顧客らにも事情を伝えて購入キャンペーンを展開した。
その結果、約2週間で、全国のビッグCでは約70トン以上ものバナナが販売された。今シーズンの終わりまでに、さらに約30トンが販売される予定という。

過去には、ライチやスイカ、赤玉ねぎなどの農作物でも、さまざまな理由で中国への輸入が止められたために、同様の事態が引き起こっている。ベトナムでは約7年前、「ベトナム製品購入キャンペーン」を始めているが、これを追い風に、ここ数年間で、生産者と小売販売者との距離が大きく縮まり、在庫商品を一掃販売できるようになるなど、非常事態で大きな助けとなっている。

商工省国内市場局のレ・ビェット・ガー副局長は、「行政関係者らはここ数年、生産者と小売販売者との関係構築に、資本や人材、時間を優先的に割いてきた」と話す。例えば、サプライチェーンの供給者と小売担当者らのマッチングなどを企画しており、この結果、2013年以降、総額で約30兆ドンを超える金額の卸売販売契約の締結に至っているという。

日系のイオンや韓国のロッテ、タイ系のビッグCなどの大手量販店も積極的にベトナムでの流通販売網に加わっている。ベトナム産商品などを自社の店舗で販売する活動などを展開し、ベトナム産農産物の販売は約3億ドルにも達する。

一方で、国内企業でも、サイゴンコープやビンマート・ショッピング・システムズなどが、ベトナム製品やベトナム産農作物のいわば〝助産師〟として活躍している。その結果、安心安全な農作物の販売など、農家と消費者の双方にとってうまみのある安定供給を実現させている。

さらに、成果を広げようと、商工省では今後、全国の農家や生産者らを全国約8660カ所の伝統的な市場とも連携させたい考えだ。それによって、さまざまな販売分野の企業団体や小売業界が直接、農産物の生産者らと手を結ぶことに積極的になり、一般的にベトナム製品、特にベトナム産農産物の安定的な市場が構築できると考えている。