ベトナムの定年退職年齢、急激な引き上げに専門家から異論の声

雇用分野の専門家は、段階的に定年退職年齢を引き上げるベトナム労働・傷病軍人・社会事業省の提案について異議を唱え、退職年齢の引き上げは、国内の労働市場を圧迫するだろうと述べている。

写真㊤=専門家は、短期的な定年退職年齢の引き上げは、労働市場を圧迫しうると述べる

同省は、現在男性は60歳、女性は55歳の定年退職年齢を、2021年から毎年6カ月ずつ伸ばすことで、それぞれ62歳と60歳まで引き上げる提案を示している。

これに対し、労働社会問題研究所の元会長、グエン・フゥ・ズン(Nguyen Huu Dung)氏は、「多くの国が定年退職年齢を引き上げているが、そのプロセスは通常15年から20年をかけて実施されている」と指摘し、「同省の提案では、わずか4年から10年で行われる計算であり、非常に性急だ」と述べた。

さらに、退職年齢の引き上げは、若手労働力への圧力となりうるため、同省は若者の雇用を確保するための施策を講じる必要がある。現状の6カ月ずつ伸ばす計画に代わって、毎年1カ月から3カ月の引き上げであることが望ましいと、ズン氏は提案した。

退職年齢の引き上げは、専門的な技術やマネージメントスキルを持つ人にのみ適合する。同省は、公的部門で勤務する人の退職年齢は現状維持とし、重労働や危険な業務に従事する人は、これより低い年齢とするべきである。

ズン氏 は「省は問題を正しく調査していない。ベトナム労働組合が行った調査では、70%の労働者が、定年退職年齢は現状のままで良いと考えていることが分かった」と指摘する。

ベトナム労働組合のブー・クアン・トー(Vu Quang Tho)氏も、「ベトナム経済は、まだ回復しつつある状況であり、現状では大学の学位を取得しながら、職のない若者が20万人以上もいる。このことが、退職年齢の引き上げ議論が時期尚早である理由である」と述べ、当局が今するべきことは、さまざまな労働者グループへの影響を見極めることだとする。
トー氏は「私たちは就業年齢にある若い世代に、高齢者の退職を待ちなさいとは言えない」とも言う。

労働分野の高官を務めたファム・ミン・フアン(Pham Minh Huan)氏は、「退職年齢の引き上げは、年金基金の収支バランスを維持するだろうが、雇用主が支払う給与予算は限られているため、雇用主は自分たちのことを考えなければならない」と話し、ひとまず政府は、2021年から毎年3カ月引き上げることで、定年退職年齢を上げるべきだとした。