専門家の視点 ベトナムのコワーキングオフィスブーム

ベトナムで国内外の事業者が、コワーキング(Co-working)を積極的に拡大させているのを受けて、専門家は、業界が急速に発展するとの見方を示している。

写真㊤=ハノイの賃貸オフィスビル(VNA)

専門家は、不動産市場におけるこの新しい形態は、スタートアップやフリーランサー、そしてますます小規模企業によって推進されていると述べた。

ハノイにあるムーンワークコワーキングスペースの共同創設者、ヴー・カム・ザン(Vu Cam Giang)氏は、英字紙「Viet Nam News」に、「当初、コワーキングは、学生や在宅勤務の従業員、スタートアップ、フリーランサー、アーティストといった新しい経験への好奇心の強い人々からの関心を集めた」と解説。しかし今では、「スタートアップやフリーランサーだけがコワーキングスペースを借りており、彼らの多くが、互いに高めあったり、協力の機会を探る場所として、こうしたスペースを必要としている」と言う。

1年以上前に事業を始めて以来、ザン氏のコワーキングスペースは常に満員であり、高い需要を示している、と彼女は続けた。

不動産コンサルタントのCBREベトナムの最近のレポートでは、2012年に初めて導入され、2015年に地元事業者のToongとDreamplexが参入して以降、コワーキングの形態は、ハノイやホーチミンで急速な成長を遂げていると指摘している。さらに、現在は17のコワーキングスペース事業者が22の場所で運営しており、今のところすべて地元の事業者だが、今年後半もしくは2018年に地方の事業者が参入すると、状況は変わってくるだろうとも述べている。

成長に関して言えば、世界におけるコワーキング産業は、過去5年間で、年率53%の伸びを見せており、ことベトナムにおいては、成長率は58%であるとレポートは示している。ただ、このコワーキングは、国内では新しいコンセプトのため、今後主要な地域や国外の事業者が参入することになれば、成長率は加速して伸びるとも指摘している。

そもそもコワーキングオフィスは、テナントが、柔軟性や創造性、快適性を得られるという点で大きな需要がある。そして、それは従来のオフィス賃貸に比べて、費用対効果が非常に高い。The Thoi Bao Ngan Hang (Banking Times) 紙によれば、5人向けの共有スペースの賃料は、月々たった750~1,080米ドルであり、オフィス賃貸では、月1,100~1,400米ドルが相場である。加えて、コワーキングオフィスのテナントは、家具やコンピューター、その他のオフィス設備への支出もない。

CBREは、コワーキングスペースのコストは都市によって差があるが、ハノイやホーチミンは、アジア太平洋地域のほとんどの都市と比較して、そのコストは低いと述べている。しかし一方で、こうしたコワーキングオフィスは、事業者が賃料を低く抑えようとしているため、一般にハイクラスなビルや地域にはなく、それらはしばしば、中心部から離れた未活用のビルにあるとも指摘している。

また、大手事業者が参入すれば、業界内での統合やM&Aが活発化し、管理が不十分であったり、不適切なコワーキングスペースが市場から排除され、既存事業者の質が向上するとも述べた。

ザン氏は、「スタートアップやフリーランサーの広がり、そして、人々の働く場の選択に対する認識の変化とともに、ベトナムでは、コワーキングの形態は拡大し続けるだろう」と述べた。