ハティン省など中部沿岸4省に環境監視システム設置へ

グエン・スアン・フック首相はこのほど、海洋の環境を監視し、異常や汚染などが発生した場合に警告する環境監視システムの新設を許可した。昨年、製鉄所排水による海洋汚染で大きな被害があった中部のハティン、クアンビン、クアンチ、トゥアティエン・フエの4省に設置され、天然資源環境省(MONRE)と4省が管理していく。

写真=海水調査を行う専門家ら(クアンビン省ボーチャック、2016年5月)

プロジェクトは、4省沿岸海域の環境を同期的に観測できる現代的な海洋系の環境監視システムを設置するもの。各地の情報収集に役立て、海域に公害汚染の兆候などが見られた場合、迅速に警告を発し、対応できるような体制を構築する。また、海域の大気、海水、堆積物などの日々の状態や質などのデータを集積し、研究などにフィードバックしていく。

プロジェクトは、今年から2年間での完成を目指し、実地調査や研究室での分析に必要な機器や設備類への充実など、5つの主要項目に対し、3200億ドン(約1400万ドル)が投入される。

投資項目の一つでは、ハティン省の海洋汚染監視警告システムの能力向上にあてる。ブンアン経済特区、特に、昨年海洋汚染を引き起こした台湾系のフォルモサ・ハティン社が経営していた製鉄所近隣海域の汚染を監視する観測所の設置が目玉。観測所は、水質や一帯の大気を、自動制御で24時間監視できるものとなる。このほか、クアンビン、クアンチ、トゥアンティエン・フエの3省でも、既存の監視警告システムを充実させ、最新の観測設備や分析研究施設などを新しく導入する。

また、4省全域での情報共有と共通の警告システムの構築も、項目のひとつとされた。リモートセンシング技術などで、水質だけでなく水位の変化や大気の変化などの情報も24時間体制で蓄積し、複数の観測所の定期的な監視情報を分析したり、情報を蓄積したりすることで研究を充実させる。

フック首相は、プロジェクトの実施に先立ち、天然資源環境省に対して、4省の関係当局と連携し、事前の実行計画の策定において主導的な責任を果たすよう求めた。

ハティン省などの中部4省では昨年4月、フォルモサ社(台湾)の製鉄所が垂れ流した汚染排水が原因で、約200キロにもわたる沿岸部と海域が汚染される大規模な環境破壊事故が発生した。このために魚が死んで、ハティン省の海岸に大量に打ち上げられたほか、クアンビンなどの3省でも被害が報告された。中部沿岸地域は、漁業と海辺のリゾートなどの観光業が主力産業であったため、地域経済に大きな打撃を与えた。

フォルモサ社は昨年6月、海洋汚染の自社責任を認め、一帯の漁業関係者や被害世帯、団体などに総額5億ドルの損害補償を行うと表明している。