トウモロコシの軸原料に合成ガス生産 農業機械研究所の開発に期待

ベトナムでは人々が古くからものを再利用する工夫や発明的精神で知られている。その最新例が、商工省の農業機械研究所による、トウモロコシ芯から合成ガスを作る技術だ。設備コストが抑えられ、廃棄物も減らせるとあって、小規模農業施設などでの応用に期待が高まっている。

技術を開発したのは、農業機械研究所のグエン・ディン・トゥン準教授らの研究チーム。ベトナム北部ソンラ省マイソン地区のトウモロコシ加工工場で試験的に合成ガス生産を生産しており、このガスを利用することで石炭の利用を減らし、環境破壊ガスの低減につながると報告した。

研究所によると、実の部分を取り除かれたのち、廃棄されるトウモロコシの軸は年間8~10万トンにものぼる。このうち、有機肥料などに利用されるのはほんのわずかで、大部分はこれまで産業廃棄物として処分されてきた。

研究所の研究チームは、焼却処分するにもコストがかかり、環境を汚染する一因になっているとして、この廃棄されるトウモロコシ軸に注目した。トウモロコシ軸は安定して入手できるため合成ガスを継続的に大量生産する原材料として理想的だったという。

ガス生産ができたことから、次に研究チームはソンラ省内で、石炭を利用していた数カ所の焼却炉で燃料として実験的に活用した。その結果、トウモロコシの乾燥など、熱源を必要とするさまざまな設備で簡単に応用することが可能で、環境汚染を低減し、加工工場の生産効率の向上にも貢献したという。

トウモロコシ軸を活用した合成ガス生産システムを使えば、輸入石炭を利用する焼却炉の約3分の1の燃料費で済む利点がある。また、設備建設コストも、火力発電装置の半分以下で済むという。研究チームは今後、技術の実用化とともに、トウモロコシ軸以外の農業副産物を使ったガス合成システムも開発していく方針だという。