手工芸村で職人が不足 人材育成が急務

ベトナムの伝統的な工芸技術を継承しながら重要な貿易商品を産出してきた各地の「手工芸村」が近年、慢性的な労働力不足に悩まされている。特に、技術訓練を受けた熟練職人は全体の12.3%というのが現状で、職人の訓練や技術後継者の育成が課題となっている。

◇慢性的な労働力不足
ベトナムには、刺繍や陶芸など、特定の手工芸に特化して製品づくりを行う「手工芸村」と呼ばれる工芸品の製造拠点が、全国各地に約5000カ所も点在している。

これらの手工芸村では、フルタイムで働く職人は全体の30%。70%は農作業の閑散期などにだけ工芸品を作るといった、季節労働者だ。ベトナム手工芸村協会でブランディングを専門とするホアン・タイ・クオン氏は、「手工芸村の労働力は慢性的に不足しているが、特殊な技術などを身につけた熟練職人において、特に顕著だ」と現状を説明する。

また、ベトナム手工芸村協会のルー・ズイ・ダン会長は、「職人らが、より給料のよい異業種の仕事へと流出していることから、全国各地の手工芸村での深刻な働き手の不足に直面している」と問題を指摘する。

手工芸村が産出する工芸品が、ベトナム経済において果たしてきた役割は小さくない。例えば、首都ハノイ周辺だけでも、さまざまな手工芸村の製品の年間輸出額は、1億7500万ドルにのぼる。手工芸品製造にかかわる企業は小規模であることが多いものの、数の多さも手伝って、ハノイ市の経済発展に大きく寄与してきた重要産業なのだ。

◇職業訓練の改革を
職人不足の対策として、力が入れられているのが職業訓練だ。国は職業訓練に対してさまざまな優遇措置を用意。しかし、熟練した職人を育てるためのプログラムの実現が必要であるなど、訓練の実施方法や内容などには改善の余地がある。

ベトナム手工芸村協会で研究開発委員会に所属するグエン・ティ・トゥ・フオンさんは、手工芸村で実施されている職業訓練の多くが短期的であるために、「効果が薄く、人材のプロ意識の育成に欠け、非実用的であることが多い」と語る。

フオンさんは、職人の数を増やすための訓練だけではなく、製品の質を高めたり、販売ルートを開拓したりするために、「訓練施設や研究開発機関などが、商品デザインや販売促進など、周辺の分野に関わる人材の育成も行うよう、当局が促していく必要がある」と指摘する。手工芸村の製品向けに洗練したデザインを提供できる専門機関の設立や、製品の知名度アップにつながる各種コンテストの開催、職人や技術者らの表彰制度の創設などを、具体例として挙げる。

また、訓練し技術を身につけた職人が、訓練終了後に確実に技術を生かして就労できるような仕組みも必要だ。そのために、企業やさまざまな団体の協力連携も必要だとして、手工芸にまつわる職業訓練制度全体の大幅な改革を求めていく考えだ。