ベトナムでの任期を終えた1年後に、前駐ベトナムフランス大使のジーン・ノエル・ポワリエ(Jean Noel Poirier)氏は「Mon Hanoi(私のハノイ)」と題したドキュメンタリー映画を発表した。前大使自身が監督、撮影した52分間のフィルムは、ハノイの街角で見つけた、首都の文化、食、建築、交通、そして人々を描いた1つの“旅”のような作品だ。

写真㊤=前駐ベトナムフランス大使のジーン・ノエル・ポワリエ氏

前大使の目で見たハノイは、素朴でシンプルだ。彼が会った真のハノイ人たちは、街の“魂”である。彼のカメラは、ごくありふれた日常を映しているが、それは例えば、フランス大使館の近くにあったバインセオ(クレープ状のものにエビ、肉、もやしをたくさんのせて二つ折りにした料理)の店であったり、タインコン市場にあるバインクオン(米粉の生地を蒸してロール状にしたもの)を売る屋台、そしてもちろんフォー・ボー(肉入りのフォー)であったり。

ポワリエ氏の目に映るハノイは、古いながらも現代的であり、慌ただしく、かつ創造的である。すべての通りが生き生きとし、台所や中庭から漂う誰かが作る食事のにおいは、道行く人を何とも悩ませる。

ポワリエ氏は、「任期を終えた大使は、いつも、彼らが過ごし、働いた地域に贈り物を渡すが、私は、ハノイの人々への愛と思いを伝えるため、また忘れられたり、知られていない場所に光を当てるために、ドキュメンタリーという形を選んだ」と製作の背景を話す。

さらに、「ハノイは、私のパリでの子供時代を思い出させる。パリは変わり、世界有数の観光地となり、高級品や博物館、フェスティバルや野外コンサートで人々を惹きつけているが、ハノイは成長しながらも、その魂や独自性を維持し続けている。このドキュメンタリーは、美しく、またチャーミングな首都としてのハノイを紹介している」と続けた。

ベトナム国営テレビの編集委員、グエン・ハ・ナム氏は、「『Mon Hanoi』は、洗練されたプロフェッショナルな映画ではないが、製作者のベトナムに対する愛情がじわじわと伝わってくる。確かに、本当にハノイを愛する人だけが、『Mon Hanoi』のような、真剣な映像や場面を作れるのだと思う」と語った。

ポワリエ氏は、兄であるアンリ・ルイ・マルセル・ポワリエ(Henri Louis Marcel Poirier)氏が、ドキュメンタリーの製作を助けてくれたと語った。兄と弟は6月と12月にハノイで撮影し、夏と冬の街並みを描いた。前大使自身は、20歳の時からベトナム語を勉強しており、ベトナム語でナレーションも行っている。映画は来年、ベトナム国営テレビのすべてのチャンネルで放送される予定だ。