世界銀行、ベトナムの科学研究発展に資金面で援助

ベトナム科学技術省は、数百万ドル単位で研究資金を調達する世界銀行(WB)の「研究と科学技術を通じたイノベーション育成(FIRST)」プロジェクトを通じ、ベトナムの科学研究の伸展を図っている。今回が第3次の募集で、過去に行われた研究機関などへの資金提供が、すでに成果を見せ始めているという。

世界銀行でFIRSTプロジェクトのマネジメントを担当するルオン・バン・タン主任は、「科学技術や革新などをめぐる政策を導き、プロジェクトが支援する研究や開発機関の有効性を高めることによって、ベトナムにおける科学技術革新の促進を支援すること」だと、プロジェクトのねらいを説明。プロジェクトは2019年まで継続される予定で、投入される総額約1億1000万ドルの資金のうち、世界銀行が1億ドルを担う。

これまでに2回の登録期間が設けられており、FIRSTマネジメント部門では47件のプロジェクトを採用して資金援助を展開してきたという。このうち、17の案件は海外からの専門家の誘致案件。10件はベトナム各地の研究機関や大学10拠点が、320万ドルの研究開発資金の提供を受けた。

例えば、ベトナム国立医薬品研究所は、記憶喪失の患者の診断や予防、治療などの研究のために、FIRSTプロジェクトから14万1000ドルを越える研究資金を調達。また、ベトナム国立宇宙センターは、20億ドンの資金調達を受けて炭素繊維強化熱可塑性プラスチック(CFRTP)や超耐熱性を持つスーパーエンプラ(PEEK)などの素材研究を展開し、小型人工衛星の素材に応用している。

大学に対しては、国立農業大学へ、ランドレース種とヨークシャー種の豚をかけわせ、下痢などの原因菌に強い豚の品種改良研究費として17万8000ドルが渡された。また、国立ハノイ教育大学へは、シリコン誘導体を下敷きにした有機性太陽光発電材の合成生産技術の開発のため、研究費として19万5000ドル以上を拠出している。

また、プロジェクトでは海外の専門家などからベトナムへの知識や技術を移転させることも目的としており、過去に18万6000ドル以上の資金提供を行っている。
タン主任によると、今回の資金提供は第3次募集となる。海外在住ベトナム系の研究者を含む優秀な外国人科学者をベトナムへ招聘し、国内の科学者や研究者、起業家らと共同研究を展開するための資金約20万ドルなどが含まれている。400万ドルが政府の研究機関の活動に給付される予定で、市場主導的な事業の導入、財政の自立と持続性などの実現を目指す。また、複数の研究機関によるコンソーシアムや大学、企業などによる、もう少し小規模なプロジェクトに対しては、1件当たり最高300万ドルを支給する。