テト用晴れ着に手軽な既製品のアオザイ 色柄豊富で若者に人気

テト(旧正月)の晴れ着といえば、ベトナムを象徴する民族衣装、アオザイ。だが最近、従来のようにオーダーメードであつらえるのではなく、既製品を求める若い女性が増えているという。デザインや色柄が豊富で、さらに価格も手ごろなため人気が高まっており、ホーチミン市では多くの服飾ブランドが既製品の商品化に乗り出している。

「親戚や友人を訪ねたり、いっしょに写真を撮影したりするときに、かわいい出で立ちでいたい。やっぱりテトにはアオザイがぴったりだと思います」
現在シンガポールで働くベトナム人女性、チャン・ゴック・バオ・チャウさん(31)は言う。
しかし、チャウさんが今年帰省するのは旧暦12月28日(西暦2月13日)で、それからアオザイをあつらえるのは時間的に無理だ。そこで、彼女が選んだのは既製品。ホーチミン市在住の友人に頼んで、店舗で希望の商品を購入してもらったという。
ホーチミン市で既製品のアオザイを扱う店舗をインターネットで探し、商品写真を数百枚見比べて、牡丹の花があしらわれたピンク色のアオザイを選んだ。セレブ達が愛用し、若者の間でも人気が高まっている「ハー・クック(Ha Cuc)」という既製服ブランドが出しているものだ。
素材は絹。価格は、アオザイと下に着用するズボンのセットで250万ドン(約110ドル)だった。
通常、アオザイをあつらえるには10日ほどかかる。「海外在住のベトナム人や、多忙な人にとっては、既製品のアオザイというのはとても便利な選択肢だと思う」とチャウさんは言う。
ハー・クックは今年、6種類の既製品アオザイを発売している。パステルピンク、フューシャピンク、赤や水色など布地の色も多彩で、リスや鶴、ランや牡丹、菊などの花が華やかにプリントされている。同社によると、既製品ながら素材は高級品を使っており、エレガントな色柄とデザインが特徴という。歌手のイェン・チャンさんやイェン・ニーさん、ミスベトナム2012となったズオン・トゥ・アインさんらセレブが愛用していることでも知られる。
一方で、ホーチミン市で既製服店を展開する「ボックスショップ」も、数百種類の規制品アオザイの品ぞろえを誇る。錦や麻、タフタシルク、コットンなど素材もさまざまで、花や鳥などの柄が刺繍や印刷で施されている。
なかでも今年は、60年代のサイゴン(旧ホーチミン市)を描き、ベトナムで昨年ヒットしたゴー・タイン・ヴァン監督の映画「Co Ba Sai Gon-The Tailor(コ・バ・サイゴン)」の影響で、水玉やアンティーク調タイル模様などのレトロなアオザイが人気だという。
素材の品質やデザインにより、価格は39万~95万ドン(18~42ドル)。ボックスショップの経営者、グエン・タオさんは、気軽で価格が手ごろな既製品アオザイは、若い女性の嗜好にあっていると見る。店はホーチミン市の1区、3区、7区にあるが、「この時期、毎日、何百人もの顧客がアオザイを買い求めに店舗を訪れる。オンライン注文も、数千着規模に増えている」と話す。
ドンナイ省の高校教師であるチャン・ミー・ティエンさんは、今年、娘と2人でおそろいのアオザイを着用したいと、既製品を購入することにした。「既製品は価格が手ごろだし、柄がかわいらしく、明るい色もステキです」。
ティエンさんが既製品の赤いアオザイ2枚を購入したのは、ホーチミン市1区ディエンビエンフー通りにある「gorDress shop」だ。価格は2着で65万ドン(29ドル)。「とてもいい買い物ができた」とティエンさんは満足そうだ。
同店の既製品は、体にぴったりとフィットさせる伝統的なアオザイに比べ、シルエットが緩やかなデザインを採用。「女性に、アオザイを着ながら、より快適に過ごしてもらいたから」だという。
さらには、アオザイをモチーフにデザインされたアオザイ風のドレスやワンピースなども人気が高まっている。品質のよいものでも、本格的なアオザイを購入するより価格が抑えられる。
錦の絹地を使った伝統的なアオザイが95万~150万ドン(約42~66ドル)であるのに対して、似たような生地を使ったワンピースなら50万ドン(22ドル)で手に入る。ボックスショップでなどによると、このような“アオザイ風”ドレスは、「金銭的に余裕はないけれど、テトらしい、かわいらしい格好をしたい」という若い世代の女性に特に人気が高まっているという。