メコンデルタ地方のサトウキビ農家 砂糖値下げで打撃

2017年から今年にかけて、ベトナム南部メコンデルタ地方のサトウキビ農家は、砂糖の値下がりによって大きな打撃を受けている。

写真㊤=手作業でサトウキビを収穫する農家(メコンデルタ地方ソクチャン省ロンフー)

農家のディエップ・バン・タムさんは、ソクチャン省のク・ラオ・ズンの約1ヘクタールの土地でサトウキビを栽培していた。だが、収穫したサトウキビを卸売業者に売ろうとしたところ、「買い手が全くつかなかった」と肩を落とした。

タムさんは、収穫したサトウキビが腐る前に収穫しようと、刈り入れ時期に労働者を雇った。そのため、最終的にソクチャン製糖社が安値で買い取ってくれはしたものの、1500万ドン(約660ドル)の損失となった。

昨年10月の収穫初期に1キロあたり700~800ドンで取引されていたサトウキビの価格は、今では500~550ドンにまで下落した。それでも、購入する業者はほとんどいないという。

ク・ラオ・ズン地区の多くの畑では、買い手のつかないまま、多くの畑でサトウキビが収穫時期を過ぎてしまった。かつては約8000ヘクタールのサトウキビ畑を抱え、ソクチャン省最大のサトウキビ産地だったク・ラオ・ズン地区だが、同地区農業農村開発局担当者によると、サトウキビからの収入が少ないことなどから、作付面積は減少傾向が続いているという。現在6300ヘクタールある同地区のサトウキビ畑のうち、作物を販売できたのは約半分の3000ヘクタールほどだという。栽培コストが1ヘクタール5000万~6000万ドン(2200~2600ドル)かかるため、多くの農家は年間売上の20~40%の減少という厳しい状況に直面している。

北隣のチャビン省でも同様だ。当局は、「地元の製糖会社、チャビン・サトウキビ有限会社だけでは、1日の処理能力は2500トンしかない」と、損失を抑えようと一斉に収穫へと動いた農家らに呼び掛けた。

チャビン省チャー・ク―地区人民委員会のレ・ホン・フック委員長によると、同地区は4100ヘクタール以上でサトウキビを栽培しているが、販売できたのはその半分にも満たないという。「ほぼすべての畑のサトウキビが収穫期を迎えている。だが、製糖会社などの購入先がみつからないため、刈り取られたサトウキビが何日も畑や詰み込まれたトラックの上に放置されたままだ」と嘆いた。

同省のチャン・チュン・ヒエン農業農村開発局長は、買い取りを続けている地元のチャビン・サトウキビ有限会社だけでは、同地区のサトウキビ全量を買い取って、処理するのに約3カ月はかかると推測する。

チャー・ク―地区では、サトウキビは収穫の柱となる重要な農作物だった。近年は乾季に海水の浸潤による塩害被害を受けることも多かったが、それでも1ヘクタール辺り約100トンのサトウキビが収穫でき、農家は3000万~4000万ドンの収入を得ることができていた。しかし、ここ数年、サトウキビ価格が下落する傾向で、需要も減少。地域の製糖会社などは、砂糖の市場価格が、サトウキビ需要の低減の原因と指摘する。

カントー製糖株式会社のグエン・ホアン・ゴアン副社長によると、砂糖の市場小売価格は1キロ当たり1万1600ドン~1万2000ドンまで急落しているが、それでも重要は低迷を続けている。砂糖生産者らは、ベトナムに近隣諸国から砂糖が大量に密輸入されていることが、国産の砂糖の価格低迷と販売不振を引き起こし、農家に打撃を与えていると見る。製糖会社でも、砂糖需要が伸び悩んでいるため、原料在庫が増える一方で、「農家から大量のサトウキビを買い入れることができない」とゴアン副社長は語る。

サトウキビの価格と需要の下落を受けて、メコンデルタ地方の多くのサトウキビ農家が、他の農作物への転換を始めている。ソクチャン省ク・ラオ・ズンのダン・クオック・ヒュイさんは5000平方メートルの畑でサトウキビを栽培していたが、昨年から今年春にかけての収穫期に大きな損失を被ったという。

「(サトウキビ栽培の)将来の見通しも明るくない」と話すヒュイさんは今、サトウキビ畑にバナメイエビの養殖を始めるための池を掘っている。

ク・ラオ・ズン地区のホー・タイン・キェット農業農村開発局長は、今季の収穫後、他の農作物などに転換されるサトウキビ畑は900ヘクタールに及ぶとみている。野菜や果物などの栽培のほか、ヒュイさんのように魚介類の養殖への転換も増えると予想する。