紅河またぐロープウェー計画、承認せず ハノイ市 巨額投資や景観悪化理由に

ハノイ市人民委員会はこのほど、フランスの民間企業が提出していた、市内を流れる紅河(ホン川)を渡るロープウェーの建設計画を、承認しない方針を固めた。渋滞緩和がねらいだったが、投資に見合う効果が期待できないうえ、紅河の景観を損なう懸念があるという。

計画は、フランスのロープウェー運営企業、ポマ(POMA)社が、ハノイ市内の「新たな公共交通システム」として、ロープウェーの導入を提案していた。同社の計画地となっていたのは、ホアンキエム地区にあるロンビエン・バスターミナルと、紅河対岸のロンビエン地区にあるザーラム・バスターミナル間。約5キロをロープウェーで結ぶもので、このうち約1.2キロメートルは紅河を横断するかたちで架けられる。

ロープウェーは、ゴンドラ1基が25~30人乗り。1時間で約7000人の乗客の輸送が可能だという。巨大な支柱で支え、上空50~100メートルを運行する計画だった。

ハノイ市の運輸局当局は、プロジェクトを承認しなかった理由として、「計画が市の総合的な都市開発計画に一致しない」と発表。「2030年までの同市の発展整備計画において、ケーブルカーのような公共交通は、優先事項とされていない」などと判断したという。

また、1時間あたり7000人の輸送人数では、ハノイ市の渋滞緩和策にはならないと、一部の専門家らから反対意見が発せられ、計画を承認しない理由のひとつとなった。計画実施に必要な莫大な投資や、頻繁に必要となるメンテナンスなども指摘され、巨額の初期投資を回収するために運賃が高くなり、通勤客ら毎日利用できるような金額にならないことも、課題として挙げられた。

ベトナムでは、北部山岳地帯のサパで登山や観光客の足となるロープウェーが建設されているほか、ユネスコの世界遺産にも登録されたハロン湾に設置されたロープウェーも、景観が一望できるとあって人気が高まっている。

一方で、都市部においては、ロープウェー導入が検討されていたホーチミン市でも、市当局が「非現実的」として昨年1月、提案が却下されている。こちらは全長約1キロメートルのロープウェーの計画で、タンソンニャット国際空港周辺の渋滞を解決する手段として検討されたが、約2400万ドルにのぼると試算された投資額がネックとなった。

ベトナムの2大都市である首都ハノイと南部のホーチミン市はひどい交通渋滞に悩まされている。その主な原因は、バイクや自動車など個人所有の乗り物の急増と未発達な公共交通網だとされてきた。

700万人以上もの人が暮らすハノイでは、500万台を越えるオートバイと50万台近い乗用車を抱え、ホーチミン市ではオートバイが約800万台、乗用車が60万台に及ぶ。両市とも都市鉄道を建設中だが、これらのプロジェクトは建設地の確保などのさまざまな理由からたびたび、計画に遅れが生じている。