ベトナムの農家支援手法を応用 ロンドン大チームに学生のノーベル賞「ハルト賞」

大学発の新規ビジネス促進のため、世界規模で開催されている「ハルト賞(Hult Prize)」の最終選考発表会で、ロンドン大学の学生チーム「サン・ライス」が、優勝を勝ち取った。少額投資で米(こめ)の乾燥施設を作り、共同利用するという、ベトナムで行なわれている小規模農家の支援手法を応用した。

ハルト賞は別名「学生のノーベル賞」と呼ばれ、学生たちが、与えられた課題を解決するための革新的な社会事業の内容を競う。世界大会は9月半ば、アメリカの国連本部で最終プレゼンテーションと選考が行なわれ、6チームが参加した。

優勝したサン・ライスの社会事業提案は、べトナムで行なわれている小規模農家による乾燥設備の共同利用などをモデルに、東南アジアの米農家の収入を確保し、将来的には、人々が適切な価格で食料を安定的に入手できる食料安全保障の構築を目指した。在庫用に米を乾燥させる先端技術には莫大な投資費用が必要で、低収入の小規模農家では導入できない、という従来のジレンマを解決した。

ビジネスモデルでは、サン・ライスが米の乾燥施設設立に賛同する信用できる投資家を集める一方で、国際稲研究所(IRRI)などを通じて、地域にパートナー農家を募る。農家は施設建設の土地を提供し、乾燥した米の量に応じて利用費を支払うという。

東南アジアの小規模農家が従来行なってきた天日干しに比べると、米の乾燥工程でのロス削減や品質安定が実現できるため、農家の収入増加につながるという。

チームを代表して、学生のキスム・チャンさんは、「現在、我々はミャンマーで、このモデルを応用した事業を始めています。現地の農家のニーズに合わせて、手法などをさらに改良していきたい」などと説明した。

今回のハルト賞は「1000万人の生活を革新させるためのエネルギー活用」がテーマ。121の国と地域から、10万人の大学生らが参加した。

ハルト賞は、学生による社会的事業の立ち上げ支援を行なうもので、国連やビル・クリントン元米国大統領などが後援。若い起業家の卵たちのビジネスプランに対して毎年何百万ドルもの投資を行なっており、ハルト賞の優勝チームにも100万ドルの活動資金が提供される。

世界各国には支部が設立されており、これらの組織を通じた資金集めも始まっている。ベトナムにも組織があり、ベトナム・ハルト賞実行委員会のホー・クワン・フン委員長は、「この賞は、大きな可能性を秘めており、今後ベトナムの教育と経済、社会の発展に大きく貢献していくだろう」としたうえで、ベトナムに関連したビジネスプランで世界優勝した学生らを称えた。