ベトナムの運輸・交通分野でIT導入加速 グラブタクシーなどの事例に刺激

ベトナムの運輸・交通セクターで、さまざまなかたちでのIT導入が加速している。最先端技術の応用の遅れが、この分野での成長を妨げていたと、気づく企業が増えたためだ。2年ほど前から、ソフトウエア技術を基盤に成長したウーバーとグラブタクシーの2社がベトナムで乗客輸送サービス事業を始めたことが、業界の刺激となったようだ。

写真㊤=最先端技術やソフトウエアの適用が、運輸や交通分野の管理費削減につながっている

スマホアプリを応用した配車を行なうグラブタクシーは、現在5万台以上の自動車を所有。ベトナムでの事業開始からわずか2年で、所有車台数が国内の従来のタクシー台数を上回る快進撃を遂げた。利便性やリーズナブルな価格、多彩な割引サービスなどの提供が顧客にアピールしたこともあるが、最大の勝因はIT技術の応用だった。これを契機に、ベトナムで従来から運輸や交通部門をになってきた企業で、技術適用の競争が始まった。

従来のタクシー会社も国内市場での基盤を維持し、強化しようと、IT化に取り組んでいる。ベトナム最大手のタクシー会社、マイ・リンや、他の地方のタクシー会社も、乗客の利便性を向上させ、コストを削減するために、自社のタクシー管理やオペレーションなどの部野でIT応用を始めた。

地方都市間の長距離バスなどを運行するサオベト社は先日、乗客向けに最新のオンラインアプリの提供を始めた。この利用で、乗客がバスの運行ルートや価格についての情報に簡単にアクセスしたり、サービス内容を選んだりできるようになり、社内業務の削減も実現できたという。オンライン活用の有益性を実感したサオベトでは、今後さらに、さまざまなタイプの社内マネジメントや運行オペレーションの管理などのために、ソフトウェアを開発する考えだ。

運輸・交通会社のハーラン貿易観光社では、チケットのオンライン受注以外にも、様々なソフトウェア活用に踏み切った。同社では、最新型の運行管理技術を使い、バスなどの旅程を記録できるカメラシステムを導入。運行の安全面の確保に役立てている。

経済学者のゴー・チー・ロン氏は、「運輸事業でのIT導入は遅れていたが、事業発展のためには、IT技術の活用が不可欠だ」と指摘する。第4次産業革命と呼ばれる「インダストリー4.0」は、製造業だけでなく、ベトナムの運輸・交通分野のサービスにも変革をもたらしている。「IT技術の応用に遅れる企業は、時代に取り残されてしまうだろう」とロン氏は指摘する。