農業生産向上のために科学技術移転を 国を挙げてハイテク農業を推進

ベトナム全土で近年、科学技術の農業分野への応用や技術移転が盛んになっている。ベトナムが農産物の輸出国としての国際的地位を確立するなかで、生産性を高め、農産物の品質を向上させることがねらいだ。地方の活性化にもつながることから政府も積極的に導入支援策などを展開している。

写真㊤=北部高原地帯のラオカイ省で展開されているハイテク農業の生産拠点

◇科学技術の農業応用を促進
ベトナム東北部の山間部に位置するラオカイ省はかつて、交通の便の悪さや地理的要因などから、家族経営の小規模な農業が主流だった地域だ。だが、科学技術の応用が急速に進んでおり、同省農業・農村開発省によると現在ではハイテク農園が1230ヘクタールにも及ぶという。

このうち282ヘクタールが野菜の栽培、105ヘクタールが花卉栽培、176ヘクタールは薬草畑だ。このほか、果樹(124ヘクタール)、稲の苗(60ヘクタール)、お茶(483ヘクタール)などにも科学技術が応用され、全農作物の平均で、1ヘクタールあたりの農業収入は2億3000万ドンにのぼるという。

これほどの広まりを見せたのは、この地方の多くの農村で、科学技術、とりわけハイテク技術の農業応用が、生産性や品質の向上に寄与し、気候変動にも対応しうる持続可能な農業手法であると理解や認知が進んだことが大きな理由だ。

科学技術省の2017年度のデータによると、一帯での農機類の活用は、金額ベースで前年度比1.5~2%も増加しており、農業の機械化の加速を示す。また、導入された新技術は105種類もあり、昨年度だけで85件の科学技術応用モデルが示され、企業と農家が提携する新型の農業生産手法の構築も50件に及んだ。

農業分野へのハイテク応用は、ラオカイ省にとどまらず、全国に広がりを見せている。

グエン・スアン・フック首相はこのほど、全国22カ所のハイテク農業ゾーンの新規開発計画を承認した。農業・農村開発省も35社のハイテク農業企業の設立と、3カ所でのハイテク農業ゾーン展開を承認した。これらのプロジェクトには、メコンデルタ地方のキエンザン省キエンルオン郡でのエビ養殖事業、中央高原のラムドン省でのタイフィエン花卉栽培農園、南中部のフーイェン省ソンカウ市スアンハイ地区での魚介類養殖事業など、全国的にも注目の事例が含まれている。

◇国を挙げて農業発展を支援
このような動きの背景には、ベトナムが近年、農産物輸出国として大きく発展していることが背景にある。生産物によっては10億ドル以上もの年間輸出額をたたき出している成功例もあるが、ベトナム農業は高い潜在能力をもつものの、それに見合った農業発展ができていない事例が多いのが現状だ。

そこで、農業発展のための科学技術移転を進めようと、政府はさまざまな施策を打ち出している。フック首相が、ベトナム国家銀行に対して、ハイテク技術を応用し、化学肥料や化学農薬などを極力使わず農産物を生産する「クリーン農業」に対して100兆ドン規模の優遇融資を行なうよう指示したことなどがその一例だ。

発令された政令98/2018/ND-CPは、農業生産と販売網の協力連携を促す内容だ。具体的には、政府が機械類の導入費用やインフラ設備の建設費の30%、また、技術移転や応用のコストの約40%を、それぞれ補助するという。

一方、科学技術省は、地方で技術を求める農村とハイテク技術を保有する企業などとの橋渡しなどを進めている。農業分野における科学技術活動は、調査研究や最先端技術の実用化と移転、クリーン農業の発展などを重点的に行なっている。特に、稲作、食用キノコ、医薬品用の薬草類、コーヒー、朝鮮人参の栽培と、ナマズとエビの養殖を優先分野とする方針だ。