ベトナムは養蜂が盛んで良質な蜂蜜の生産で知られるが、事業は山間部のへんぴな土地で行なわれており、小規模事業者が多く、生産性の向上や品質の安定などに課題があった。だがこのほど、新型の自動多機能ヒートポンプシステムの業界への導入が始まり、蜂蜜生産に活気が出てきた。

この新型の自動化多機能ヒートポンプシステムは、蜂蜜製造に不可欠な乾燥工程の時間が短縮でき、従来の初期加工や保存工程などのコスト削減につながる。ベトナム養蜂業の従来の課題を、一気に解決できる手段として注目されている。

養蜂業で主要な利益源は、蜂蜜と花粉だ。だが、養蜂に詳しいカオタン技術大学のブー・ケ・ホアック博士によると、特に重宝される新鮮な花粉は、30%以上が水分で占められており、短時間で腐ったり発酵したりしてしまうという。蜂蜜も23-30%の水分含有率があり、保存が難しいデリケートな食品で、収穫後、すみやかに蜂蜜や花粉を乾燥させるということが大きな課題だった。しかも、ベトナムでは依然として、手動の乾燥機器が主流で、乾燥工程での品質維持が難しかった。

新型システムの利点は、蜂蜜は液状や固形、花粉も固形や粒状など、形状や粘度がさまざまなものの乾燥に対応できる点だ。従来は、蜂蜜と花粉はそれぞれ違う機械を使って乾燥工程を行なう必要があった。蜂蜜用乾燥機は、蜂蜜が年じゅう収穫できるのでまだしも、花粉は収穫時期が短いため、花粉専用の乾燥機は短期間しか使うことながく、さらに他の用途に使えないため、養蜂家にとっては非効率な設備投資だったのだ。

そこで、開発されたのが、この新型の自動化された多機能型ヒートポンプシステムだ。この導入によって、ベトナムの蜂蜜と花粉を海外に輸出できる水準にまで持っていけるという。作業効率もよく、花粉なら乾燥工程を1回当たり3.5~4時間にまで減らすことができ、消費電力も1キロあたり0.6~0.7キロワットに抑えられる。また、蜂蜜の乾燥も45~50分に短縮でき、消費電力は1キロあたり0.14~0.16キロワットだ。

装置は小型で、山間部などで行なわれることが多い養蜂業に最適。養蜂家らの収穫後のロスを最小限に抑え、生産性を上げることにつながると期待されている。すでに、ティエンザン省のクーロン養蜂社や、バリアブンタウ省のトゥアン・タオ・ハニービー社、ビンズオン省のビナオン社などで、導入がはじまり、今後、利用地域を拡大させていくという。