農業農村開発省(MARD)は、コーヒー生産団体などがつくる国際組織「グローバル・コーヒー・プラットフォーム(GCP)」と協力し、コーヒー生産にかかわるさまざまな情報を集約する「コーヒー・データベース」の構築を始める。ハノイで23日開かれた業界のワークショップで明らかにした。コーヒー農家の運営支援や製品の品質管理などに役立てていく。

農業農村開発省によると、データベースは、コーヒー栽培が盛んな中央高原のラムドン省ディ・リン地区で試験的にスタートさせる。8500軒以上のコーヒー農家らが参加するパイロット事業から情報を集約し、特に「持続可能なコーヒー栽培」という切り口に着目し、実際の採用事例などを掘り起こして評価する。また、生産地域、栽培される種苗の品種、土地の状態と管理手法、水源や灌漑システム、コーヒー収穫時期以外の間作の有無なども、細かくモニタリングする。

同省植物栽培局のレ・バン・ズック副所長によると、持続可能な栽培や品質の向上、作物に対する付加価値の付与、安全性の確約などのために、コーヒーの原産地認証の必要性が高まっており、その手始めとして、試験的に、地域情報などと密接にかかわったデータベースの構築が決まったという。

2018年のベトナムでのコーヒー生産は、農地面積が68万ヘクタールで、1ヘクタールあたりの収穫量は2.5トンだった。昨年のコーヒー輸出は、180万トン、輸出総額は約35億ドルに達し、農作物輸出を促進するベトナムの最重要農作物のひとつとなっている。

ズック副所長は、「データベースができれば、農家の生産管理の支援となるだけでなく、原産地が明らかになることで卸業者や食品メーカーが生産地への情報をたどることができ、生産農家への直接投資も可能になる」と説明した。

このシステムを拡大するために、GCPベトナムのチャン・クイン・チー代表は、「今後GCPは、ラムドン省や農業農村開発省と協力し、データベースシステムを全省へ広げていくためのロードマップを作成する」と述べた。

GCPはすでに、コーヒー農家支援のため、ベトナム各地でさまざまなプロジェクトを展開。ラムドン省以外でも、同様のデータベースシステムの確立を検討しているという。

チー代表は、「このようなデータベースは、狭い地域だけの情報や活用では効果がない。大きく規模を拡大する必要がある。各地で条件を整え、一律に情報収集できれば、ベトナムのコーヒー業界の概要や特徴が明らかになるだろう」との期待を示した。

これまで、農業農村開発省は、「ベトナム持続可能な農業転換プロジェクト(VnSAT)」などをはじめ、全国で特色ある農作物栽培事業を展開するための支援事業に取り組んできた。これらのプロジェクトによって得られたデータや成果も、データベースの拡大に役立つと見られており、同省では今後、これらを元に、各地で独自の予算を挙げ、データ収集のためのガイドライン作成に着手するという。