ハノイ名物、屋台の衛生管理強化 味に加え安全性でも観光客らにアピール

市民に愛され、観光客の人気を集めるハノイ名物の屋台のストリートフード。だが、なかには衛生状態に眉をひそめざるを得ない店もあったため、観光資源としての屋台を活性化させながら食中毒の発生などを抑えようと、ハノイ市当局は1年前から「食品安全衛生プロジェクト」を展開。経営者らの教育などにあたってきた成果を今月、発表した。

プロジェクトは、ハノイ市内のバーディン、ホアンキエム、カウザイ、ハドン、ロンビエン、タインスアン、タイホーの各区と、郊外のダンフォン県の8地区が対象。屋台の経営者らを対象に、衛生管理の徹底などを求めるねらいで開始された。

ハノイ市保健局がまとめたプロジェクトの成果集によると、プロジェクトの実施後、営業店舗の95%が、食品取り扱いに関する衛生証明書を取得したという。また、アンケートでは、「原産地がはっきりとしている食材を選んで使用している」という店が、2017年と比べて倍増し、全体の85.5%を占めるようになった。

ハノイ保健局のグエン・カック・ヒエン局長は、安心安全な屋台モデルを構築するにあたって、「路上での食品販売の衛星管理についての理解が最大の課題だった」と話す。なかには、場所が狭すぎて適切な設備が設置できなかったり、原材料の原産地が明らかにできないなどの理由で、基準を満たせなかった店もあった。さらに、飲食後のゴミを路上に捨てる客が少なくないなど、利用者側のマナーが問われる場面もあったという。

プロジェクト終了後も保健局では、定期的に立ち入り検査を継続し、店舗に食品衛生基準や環境保護基準などの遵守を促していく。ヒエン局長によると、悪質な違反が繰り返される場合は、罰則を与える方針だ。

ハノイ市カウザイ区のズイタン通りには、35軒ほどの飲食屋台が並び、毎日5000人以上が利用している。同地区人民委員会のチャン・チー・トゥー・フォン副委員長によると、当初は古いやり方を変えることに抵抗感が強く、プロジェクトへの参加をためらう事業主もいたという。特に、帳簿管理の徹底や顧客の支払い領収書の紙面化などでハードルが高かった。衛生面では、調理担当者が食品の安全性に無頓着だったり、消毒がずさんだったりする店が多かった。また、衛生管理に関する客側の意識も低く、客の飲食マナーも悪いなど、当初は課題が山積していたという。

一帯では、4カ月にわたって店舗経営者らへの講習などを実施し、結果として各店の衛生管理が格段に改善された。これを受けて、屋台が並ぶディッ・ヴォン・ハウ地区の人民委員会は一帯を「安全屋台の通り」と名付け、看板などを掲げた。

一方、ダンフォン区では、屋台の数が少なく、小規模店がほとんどだったことから、当局の打ち出した衛生管理の方針にもすぐに従っ他店舗がほとんどだった。同区内では、全20店の店舗がパイロット事業に参加し、衛生管理の徹底もスムーズに行なわれたという。

ハノイ市保健局は今年1月、パイロット事業に選ばれた8地区の屋台通りで、1年間の活動を総括した報告書をまとめた。このなかで、「プロジェクトの真の成功と拡大のためには、事業の見直しや、結果の現場へフィードバック、屋台だけでなく、企業や店舗、食品製造業やケータリングサービスなどあらゆる飲食事業と当局の協力体制が必要だ」と結論付けた。

同市では今後さらに、6地区に同様の試みを拡大させる方針。食中毒や食べ物由来の疫病などの感染拡大を抑える努力を続けるとした。