国際化にらみ、ベトナムで工業所有権登録が急増 処理能力追いつかず課題も

2019年の上半期、ベトナムでの商標権などの工業所有権の登録申請件数は、前年同期比66.8%増と大きく数を増やした。特に増えているのが特許権(前年同期比79.2%増)と商標権(同83.8%増)だが、役所の処理能力が追いつかず、申請承認までに数年もかかるなど、課題も増えている。

科学技術省の傘下にあるベトナム知的財産局によると、申請が急増した背景には、第4次産業革命を契機に、研究者や企業などの間で、自分たちのアイディアや発明の権利保護についての意識が高まっていることある。

登録申請の急激な増加は、その審査や評価能力、設備などが不十分であるベトナム知的財産局にとっては、大きな課題となっている。申請数が増加しているのに処理が追いつかず、同局が現在、承認のための審査をしているのは、数年も前に届出を受けた申請だというのが現実だ。今年に入っての申請はもちろん、2018年の申し込みも、処理が始まるまで、まだまだ待たされることになる。
また、登録の増加とともに知的所有権の侵害などのトラブルの件数も、前年と比べ50%以上も増加している。

この現状を分析し、下半期の業務を計画する会議で、ファム・コン・タック科学技術副大臣は、「知的財産局が工業所有権の申請処理を迅速化し、国際化を進めるために努力をしている」と強調した。
ベトナムがEUとの間の自由貿易協定「EVFTA」や、「包括的および先進的な環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)」などに参加したことも、知的財産保護の観点から、申請が増えることにつながっている。 今後、知的財産局は、情報技術インフラを近代化させ、登録申請の受理と苦情処理の能力を、質、量ともに改善することを目指す。

知的所有権局のディン・フー・フィ局長は、今年の残りの数か月間は特許と商標を最優先し、登録申請の処理を加速させると約束した。 また、申請前のコンサルティングや支援活動にも力入れる一方で、知的財産のデータベース構築や、技術移転センターの設立などに取り組んでいくとした。 国際的な側面では、知的財産権に関する交渉などに参加するほか、工業デザインの国際登録を扱う「ハーグ協定」への参加手続き完了も目指す。