議論よぶハノイのバイク規制 対象地区や料金支払い、公共交通の充実など課題山積

通勤時間帯の大渋滞を緩和しようと、首都ハノイでは数年来、街中心部へのバイクの乗り入れ規制が検討されてきた。このほど、ハノイではその具体策をめぐり、専門家らによる会議が開かれた。「地区ごとの走行や進入の禁止」と「環状道路内では公共交通を利用する」という2案が検討されたが、どちらの案も課題が指摘され、実現までには時間がかかりそうだ。

運輸省の交通発展戦略研究所(TDSI)によると、現状では、首都ハノイ市内を走行する自動車、バイクなどの総数は約660万台。590万台がバイクで、自動車が60万台とされる。2011年と比べると、2018年には、バイクと乗用車の台数が約6.7倍に急増し、1000人あたりのバイク所有数は約760台にものぼっている。

運輸省の交通開発戦略研究所(TDSI)では、2030年までに、ハノイの17の区の一部と通りや地域へバイクを乗り入れることを制限する案を掲げている。これらの対象地区には約474万人が暮らし、市の人口の約半分が集中しているだけに、課題が山積しているようだ。

物議をかもしている乗り入れ制限計画について、同研究所のファム・アイン・トゥアン代表は、「人口と同じだけの人がそれぞれ、バイクに乗るとすると、道路の利用面積は、バス利用時の約6.8倍にもなってしまう。すべての車両を平等に扱うと、必然的に渋滞が引き起こされることになる」と説明し、公共交通であるバスを優遇して、個人所有バイクの街中心部への進入制限の正当性を主張した。だが一方で、トゥアン代表は、行政区に従って進入禁止区域を設定する手法については、「各ゾーン内外を移動する人々のための公共交通機関の編成が困難である」と話した。

また、市内を取り囲む環状道路内部のみを進入制限地区にするという、シンガポールやロンドンなど多くの都市で適用されているモデルも提示した。一定の場所にバイクなどを停車させ、そこからは公共交通に乗り継ぐ「パークアンドライド」方式を実現するにしても、「ゾーン境界地点での駐輪場設置や、スムーズな乗り換え実現などが難しい」と課題を認めた。

ハノイ市中心部へのバイク乗り入れ制限は今すぐに開始できるものではなく、「ハノイの公共交通機関が、人口の60.5%の移動を可能にできるようになって初めて、バイク侵入禁止の実施が検討すべきだ」と述べた。

これらの条件を2030年までに満たすためには、ハノイは都市鉄道8本の開通、市バスの運行ルートを200路線にまで拡大する、3万5000台のタクシー走行を実現する必要がある。また、小型バスを使った路線の開拓(15~20本)、8000~1万台の民間レンタルサイクル事業開設などの実現が大前提になっているという。

提案されたバイクの制限策は、特定の時間または曜日にのみ、指定された道路だけで適用される。歩行者用ゾーンを含む多くの道路では、ハノイの公共交通機関が運行する午前6時から午後10時までを対象時間とし、公共交通機関を代替利用してもらう」と付け加えた。

95の市や町が参加する自主組織、「ベトナム都市協会」のブー・ティー・ビン前会長は会議で、「社会的混乱を避けるために、ハノイでのバイク規制は急ぐことなく、段階的に規制実施を進めなければならない」と主張。住民にバイク規制の考えを浸透させるために16年間を費やしたのち、いくつかの道路でのみバイクを禁止、さらにその後、全市でのバイク禁止と、大気汚染につながる排気の不十分な老朽化したバイクの全面的な利用禁止を導入した中国広州の例を紹介した。

ハノイ交通局のブー・バン・ビェン局長は、郵便や新聞の配達など、バイク乗り入れが不可欠な業務の従事者についての特別配慮を求めた。

また、会議に参加していた専門家の一部からは、バイク乗り入れを制限するために、一部区域内での走行料金の課金を提案した。NECベトナムのマネージャー、オノ・コウジ氏は、近代的なIT技術の導入で料金支払所の設置などを省くことができると提案。「電気や水道の料金支払いと同じような支払いシステムを取り入れ、料金は道路を利用する時間帯、渋滞の状況などによって変動するような方法が実現できる」とした。

2030年までに街中心部でバイク規制を実現させる計画はもともと、2017年に決定され、交通省が、「ハノイの交通渋滞と排気ガスの問題7を解決するために、根本的な解決策の導入が必要だ」として、それを支持してきた。しかし、バイク制限の代替となるべき公共交通網が現状ではまったく不適当だと、一部の交通専門家らが反発している。