ITベンチャー企業のウィ―・デジタルは、銀行や旅行など、さまざまなサービスで使われる顔認証や生体認証新の国内パイオニア的存在だ。設立から3年が経過し、国内の銀行や大企業の顧客向けネットワークを築いた。

政府がキャッシュレス社会への移行を推進するベトナム。ウィー・デジタルの顔認証技術は、携帯電話やPCを使った銀行間の送金をより安全で簡単にするツールとして普及が進む。

同社のクリスチャン・グエンCEO=写真=は当初、キャッシュレス決済の市場に進出しようと思っていたが、大手金融会社にはたちうちできないことがわかり、サポートする側の道を選択したという。銀行以外の観光分野にも視野を広げ、ビングループのホテル、ビン・パールリゾートが最初の顧客となった。同ホテルで使われているシステムには、国内の大卒技術者10人で取り組み、「ほぼ3年の歳月がかかった」とグエン氏は振り返る。

現在は、銀行と協力して、コンビニなどに設置されている簡易端末にも技術を提供。入金確認以外にも、顔認識によるOTP (ワンタイム パスワード)やフェイスペイ(FacePay )といったモバイル取引にも対応している。

グエン氏は、「いぜんとしてピンコードとOTPという2つの技術が、国内だけでなく世界中で使われ続けているが、OPTによる認証には抜け穴がある。文書の偽造やハッキングは、顔や生体を偽造するよりも簡単だ」と生体認証の安全性を強調する。

起業前、グエン氏は マレーシアやシンガポール、タイなどで展開する飲食産業などさまざまな事業に共同創業者などの立場でたずさわってきた。「以前はITとは異なる分野だったが、『新たな体験を提供する』という点において、現在の仕事と共通している」と話す。ウィー・デジタルの事業は、ベトナム国家銀行の主催する「ベトナム・フィンテック・チャレンジ」の1位に輝くなど、業界でも高く評価されている。