ベトナムに旧正月「テト」到来 タンロン城跡では「年末年始」の儀式 

ベトナムは1月25日、一年でもっとも重要な祝祭であるテト(旧正月)を迎えた。テトを前に、首都ハノイのタンロン城跡では、旧正月を祝う「年末年始の儀式」が執り行われ、祝祭の期間中、広場などでは伝統的な遊びなどが繰り広げられ迎春ムードが高まったほか、各家庭では家族が集まって新年を祝った。

◇タンロン城跡では宗教儀式「コン様、タオ様の拝礼」
「トン・クー・ニン・タン(Tống cựu nghinh tân)」と呼ばれる一連のテトの儀式は、内容が多様だ。なかでも重要なのが「オンコン・オンタオ(コン様タオ様)の拝礼」だ。ベトナムの民間信仰では、普段は各家庭にいる「コン様」「タオ様」の2人の守り神がテトに天にのぼり、天にいる玉皇に人々の善行などを報告するとされる。そのため、テトを前にした旧暦23日、タンロン城遺跡では、コン様とタオ様を祭る拝礼が執り行われた。

ハノイ市人民委員会のゴー・ティ・タン・ハン副書記や市民の代表者らは、初代皇帝を拝礼し、善行の象徴とされる鯉の川への放流などを行った。

また、ダオンモン庭園では、テトを象徴する「カイネウの木」が立てられ、訪れた人々が鯉や鐘などの形をした縁起物の飾りを取り付け、新年の幸福を祈願した=写真

帯では、テトにつきものの書道や伝統的な民族遊び、正月用品などを販売する市場なども開かれている。イベントは、旧暦1月9日(2月2日)まで。

◇家族に感謝 家庭でのテト

一方、家庭でのテトは、文化や伝統的な側面に加え、昔から農閑期だったため、家族が集まってゆったり過ごすという要素が色濃く残る。もっともベトナム人の精神性やアイデンティティを伝える行事だといえる。

旧暦の12月の準備のころから、街にはテトの雰囲気が漂う。さまざまな供え物や飾り物の金柑や桃などの花が売られる。人々は一カ月ほど前から、家族で味わい、楽しむために、果物などの砂糖漬けやラッキョウの漬物などを作り始める。どの家庭でも、テト前は、1年間でもっとも多くのごちそうを準備する時期なのだ。

形式的な意味だけではなく、家族集結の意味でも、テトはベトナム人にとっても重要だ。海外で働いたり学んだりしている人も増え、世界各地からベトナムに帰ることのできない人もいるが、誰しもテトの雰囲気を懐かしみ、家族を思い出す。

ベトナム人にとって、テトは、新旧の年、空と大地が出会う希望の瞬間で、過去の1年間を見返し、反省する時間でもある。旧暦1月1日は父のテト、2日は母のテト、3日は先生のテトと古くから言われており、これらの人々に尊敬や感謝の意を示す時期でもある。ベトナム人のテトは、儀式だけにとどまらず、家族や友人、知人などとの人間関係に感謝する時期でもあるのだ。