知的財産権(IPR)の保護は、とりわけ国際的な経済統合のプロセスにおいて、企業や国の経済が競争力を得る効果的な手段である。昨今ベトナムでは、企業や消費者の間でその重要性が認識される一方、効果的な活用にはまだ至っていない。

商工省傘下の科学技術局によると、知的財産(IP)は無形資産であり、企業の能力をはかる手段として役目を果たしつつある。ベトナム企業の競争力を高める重要なツールであり、実際に調査した消費者の約9割が、「ブランドの有無は、購入を決める決定的要因だ」と答えている。

海外では、こうした無形資産が企業資産全体の7割以上を占めており、一部には9割を超えるケースもある。加えて、知的財産権は模倣品の防止にも重要な役割を果たす。

2019年、国家知的財産庁は6万8386件の知的財産権の出願を受けたが、この件数は前年に比べて18%増加した。ここには、7290件の特許出願、3091件の工業意匠出願、4万8374件の国内商標出願、9017件のマドリッド制度に基づく国際商標出願、10件の地理的表示、244件のベトナム発の国際登録出願が含まれる。同庁は同年、3万6504件の知的財産権証明書を付与し、この数も前年比で44.1%増加した。

こうした傾向は、知的財産保護に対する意識の高まりを反映している。併せて、政府でも知的財産保護へ向けた法整備が行われており、具体的には2019年、科学技術省が知的財産の範囲を取り決め、国会は知的財産法などの条項を改正、補足する法律を可決した。

また、地理的表示の管理においては、科学技術省と農業・地方開発省、商工省は2018年、ベトナム製品の地理的表示の開発・管理に関する連絡協定を締結。世界市場における保護製品の価値向上やベトナム製品の競争力強化に貢献している。

国家知的財産庁のレ・ゴック・ラム副長官は、「企業や消費者は知的財産権を理解しなければならない。知的財産権に対する認知が広がれば、模倣品の消費防止につながる。国の管理機関も、知的財産に関する知識を高める必要がある」と指摘する。

企業は最高のパフォーマンスを発揮するために、自社の知的財産権を守り、管理し、行使するために必要な対策を講じるべきだ。インダストリー4.0時代では、知的財産は市場競争で優位性を持つためのツールであり、すべての企業にとって重要で、見過ごすことはできない。