バックマイ病院で集団感染 ハノイ市や保健省が追跡調査など実施

ベトナムでも最大級の総合病院、ハノイ市バックマイ病院で、新型コロナウイルスの集団感染が発生し、影響が懸念されている。グエン・スアン・フック首相がこのほど開いた中央管轄市5都市のオンライン会議で、ハノイ市人民委員会のグエン・ドック・チュン委員長が詳細を報告し、「市内の感染クラスターのうち、バックマイ病院のケースがもっとも拡大リスクが高く、複雑だ」と警鐘を鳴らした。

3月末で20人だった同病院の新型コロナウイルス感染者は、4月2日で40人を超えた。発覚までに多くの患者の家族らの見舞いがあったほか、患者や病院関係者が、ハナム省のバックマイ第2病院やニンビン省へと移動。これらの影響で、北部各省でも新型コロナウイルスの陽性患者の急増が起こりうるとされた。

病院は徹底した消毒作業が行われた。

バックマイ病院は重症患者への治療を多く行っている総合病院で、複雑な爆発的感染拡大の発生要素がすべてそろっていると懸念される。3月19日の段階で、外来診療などを停止していれば、感染は収まったかもしれないが、その後も毎日5000~7000人の患者がさまざまな病気治療のため、同病院を訪れていたという。

もっとも心配されているのは、3月20日以降、のべ5000人の患者が、同病院から他の医療施設へと転院させられていることだ。このうち、ハノイ市内部の他院への移転は1592人だった。

保健省などが調べたところ、86人目の感染者であったバックマイ病院の看護師が、業務として計3000人の患者らに薬を配布しており、感染を拡大させた可能性があると指摘されている。

また、同病院の病院食を提供していたチョンシン社の従業員らからも同時期に感染者が出ている。同社は、同病院のスタッフ5000~6000人にも食事を提供していた。食堂は、同病院スタッフのほか、外部の人間も利用することができたため、25日までで700人近くが食堂に入っているという。感染した患者らがここで食事をしたとも伝えられており、これらの情報が正しければ感染がさらに拡大する恐れもある。

同病院では、ハノイや各省からの医学生2000~3000人も勉強や研修を受けていたが、3月20日に別の場所へ移動させられた。

バックマイ病院は、日々の出入りの人数が多く、発生した感染者クラスターが、韓国(大邱市)やイタリア(ロンバルディア州)、米国ニューヨーク市の3カ所よりも複雑になっている。その影響で「全国へ感染が拡大する懸念がある」とチュン市長は訴えた。

3月19日以降、チュン市長は同病院や保健省と相談し、同病院の一部閉鎖や、診断制限を行ったほか、全患者にコロナ検査を実施して管理した。

また、過去2日間、同病院に立ち寄った患者の家族ら1592人の体調確認などを行い、一部を隔離させている。感染拡大は抑制されてきたが、今後も市人民委は保健省と協力し、バックマイ病院と接触のあった全員を追跡検査する予定だという。