何度も長距離やマラソンのレースを走ってきたグェン・ダット選手=写真=は、先日、少し特別なフルマラソンを完走した。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐためにベトナムで、自宅待機措置が行われるなか、競技はハノイ市ドンダー地区の建物の屋上で行われた。ダット選手の孤独なレースの完走タイムは6時間22分だった。

ダットさんは、100キロ超えの距離を走破するスーパーマラソンの選手。コロナウイルスのまん延によって走る楽しみを奪われたベトナムの何千人ものランナーの1人だ。

新型コロナウイルスの感染を避けるために人との間に距離を置く「ソーシャル・ディスタンス(社会的距離)」を体現し、人々に自宅待機による感染拡大防止の大切さを呼び掛け、勇気づけようと行った。狭い周回コースを何度も走るため、退屈を紛らわそうと小さなスピーカーを持ち出し、オーディオブックを聞きながら走った。

約42キロメートルのフルマラソンの距離を、たった一人、ビルの屋上で走りぬいたダット選手は、トイチェ新聞の取材に対し、「距離そのものはそれほどキツくはなかった。ただ、屋上が狭かったので、閉塞感を感じてとても疲れた」と話した。さらに、ほとんど人が訪れることのない屋上がコケでぬるぬるして滑りやすかったことから、「走るスピードがとても落ちてしまった」と残念がっていたという。

同じころ、アマチュアランナーのズオン・グエンさんも、自宅前を往復するコースでのマラソンにゴールした。午前6時にスタートしたズオンさんのレースは、30分の休憩をはさんで、約6時間後にフィニッシュを果たした。

「とても興味深い体験だったけど、きつかったね。最初の5キロは、短い距離を行ったり来たりするのに目が回ってしまったよ。足も痛くて、3回ほど途中で休憩して足をマッサージしなければならなかった」と語った。

写真㊤の左から、ファン・ヴァン・ホアさん、チャン・バオ・カインさん、レ・ディン・トイさん、ター・チュン・ルーさんの4人は、5日の日曜日、人々に外出を控え自宅待機するよう訴えるために行われたバーチャルマラソン「Vレース」に参加した。朝7時にスタートし、それぞれの自宅周辺で21キロのハーフマラソンレースを走った。

ハノイ市で参加したレ・ディン・トイさんは、コーザイ地区のグリーン・スターズビルの屋上でレースを走り、2時間22分22秒でフィニッシュした。

フエ市では、ラン栽培農家のファン・ヴァン・ホアさんが、約30平方メートルの農園内を約4000周走った。ホアさん宅からほど近いフーイェン省では、ター・チュン・ルーさんが自宅前の短いコースを約2時間、何度も走って往復した。

女性でただ一人の参加者となったチャン・バオ・カインさんは、ホーチミン市のビルの廊下を、もくもくと走り続けた。

オンラインニュースの呼びかけで実施されたこのVレースには、数1000人がネット経由で参加。「無用な外出を控えて自宅で過ごして」と人々に訴えかけると同時に、遠方の知人などに自分の無事を伝える手法としても注目された。