“白い公害”をなくせ ベトナム全土でプラスチックごみ対策に本腰

“白い公害”と呼ばれるポリ袋などのプラスチックごみは、ベトナムでも大きな社会的問題となっている。その削減のために、ベトナムは全国で約1億人を動員して、ゴミ削減プロジェクトの展開を始めているが、家庭から廃棄するさいの分別徹底やごみのリサイクルシステムの確立など、課題は多いようだ。

国連の2018年特別報告によると、ベトナムのプラスチック廃棄物汚染は世界でもひどいレベルに分類されており、調査された109カ国中のワースト第17位だった。南北に長いベトナムの海岸線が、毎年約73万トンものプラスチック廃棄物の海中投棄場所となってしまっているためだ。

プラスチックは、便利で安価だということが、その用途と利用、そして最終的には廃棄を増やしており、さらに都市化と人口増加が問題の悪化に拍車をかけている。ベトナム都市環境工業地帯協会の調査によると、ベトナムで発生するゴミは、毎年12%ずつ増えている。特にハノイ市やホーチミン市、ダナン市、ハイフォン市などの大都市で急増しているという。

ハノイ市で家庭から捨てられるごみの量は、1日で約5500~6000トンに及び、このうち8~10%をプラスチックごみが占める。ホーチミン市でも、1日の家庭ごみ9000トンのうち1800トンがプラスチックだと同市自然環境局は話す。

市民のプラスチック使用が一般化するなかで、政府当局は二方面からの解決を探っている。ひとつは、市民のリサイクル意識を高めつつ、プラスチック廃棄物のリサイクル利用発展を促進することだ。もうひとつが、プラスチックの利用そのものを減らし、代替品への活用へとシフトさせようとする動きだ。

フランスのODA実施機関であるフランス開発庁(FDA)の専門家であるマリーラン・グエン・レロイ氏に話を聞くと、欧米諸国では家庭から廃棄される段階で分別が行われ、ごみの種類によって処理やリサイクルなどが選択され、一部は火力発電用の燃料やたい肥の原材料などにリサイクル活用されているという。

一方では、ベトナムの家庭ではごみを捨てるさいに分別しておらず、湿度の高い気候も手伝い、水気を含んだごみは燃料としての焼却利用が難しいという課題もある。現時点では、ハノイ市で毎日発生する70万トンのごみの大半は、プラスチックごみも含め、焼却処分か埋め立てにされている。いずれも、水や土、大気を汚染させる方法だ。

世界各地で実施されているプラスチックごみの処理手法から、ベトナムが学べる点は多いはずだ。例えば日本では使用済みペットボトルの分別収集が進められ、それを精製し、素材として再活用するPRTと呼ばれるリサイクル技術が確立されており、再生された原材料は、中国を中心に広く輸出されるまでになっている。また、オーストリアでは、菌類から得られたプラスチック分解酵素を活用してペットボトルを分解させ、原材料のポリエチレンテレフタレート樹脂を精製するというハイテク技術を応用する企業も出てきている。

このような技術応用を視野に入れつつ、レロイ氏は「ベトナムが最優先すべきなのは、当局や市民が、日々の生活のなかで、使い捨てのプラスチック製品の利用を減らすことだ」と唱える。

ハノイ市は昨年から、2020年12月31日までに、プラスチック製のパッケージ利用を終了させるよう、さまざまな企業に対策を求めるプロジェクトを進めている。ホーチミン市も、2021年までを対象期間としプラスチックごみ削減キャンペーンを展開中だ。

専門家らは、市民らにプラスチック製品の利用を減らすことを呼びかける一方で、家庭でのごみ分別を徹底していくことが最重要課題だと指摘。自然環境内に投棄されるプラスチックごみを削減するためには、リサイクル業界の発展促進も重要だと指摘している。