トゥーティエム地区の再開発実現にめど 元住民らに2haの土地返還へ ホーチミン市

ホーチミン市のトゥーティエム地区を対象とした大規模な都市再開発に伴って、同市はこのほど、不法に立ち退き対象とされた約200軒の元住民のために、2ヘクタールの市有地を住民らに返還することを決めた。住民らによる土地所有権の主張や、再開発計画にからむ市幹部らの汚職などで停滞していた同計画に、ようやく実現のめどが立った。

対象となるのは、ビンカイン区と近隣地区に住んでいた住民198世帯。これらの住民は、当初のトゥーティエム新都市の計画区域に該当しない4.3ヘクタールの土地に住んでいたが、誤って土地を収用されたと主張。政府検査機関が調査を実施し、「ホーチミン市当局が、住民らから不法に土地を奪取した」とし、地域内の土地区画について、住民らに法的権利があるとの判断を示していた。

これを受けて、ホーチミン市人民委員会はこのほど、該当地区の電気や上下水道などのインフラ整備を行った後に、土地を住民らに返還することを決定した。地区内には、最大で4階の建物を建築することが認められた。

他にも、土地が再開発のために収用された330以上の世帯に対しても、補償と移住の承認を行った。土地所有権をもっていた住民らには、同等の広さの代替地を供出し、1993年10月以前から該当地区に賃貸で住んでいたその他の世帯には、最大で200平方メートル、居住物件の30〜40%の広さに相当する住宅の権利を付与した。

農業用地に関しては、法的な文書がなかった場合も含めて、他地域の同じ広さの土地との等価交換が認められた。ただし、農業を継続せず、その土地を宅地転用する場合には、2018年9月に定められた規範に従い、必要な料金を支払う必要がある。

かつてのトゥーティエム地区一帯には住宅密集地も多かったため、居住していた住宅の広さが36平方メートル以下だった世帯には、土地の提供はせず、市営住宅などに転居させる。一方、200平方メートル以上の土地を所有していた場合でも、付与される土地の上限は広さ200平方メートルまでで、それ以上の面積分は、5月7日の地価に基づいて現金で返還される。

ホーチミン市人民委員会のレー・タイン・リエム副書記長は、このほど行われた会議で、「不法な土地収用の対象となった世帯への代替地の付与や新たな住居への転居は、9月には開始される」と明言した。

                       ◇
大規模な再開発が計画されるトゥーティエム新都市地区は、蛇行して流れるサイゴン川に、半島のように突き出た657ヘクタールの土地。ホーチミン市の中枢部である1区の対岸に位置する。

市当局は1996年に一帯を、金融街を中心にした複合的な再開発都市に変貌させる計画を承認。当時は、東南アジア最大の都市開発の一つになるとして注目を集めた。

しかし、土地の取得に10年以上もかかったうえ、対象外の土地が誤って収用されるなど住民らとのトラブルが続発。複数の市幹部が住民移転用の土地の不法転売にかかわっていたことが発覚し、市トップの元書記のレ・タイン・ハイ元書記が更迭されるなど、さまざまな問題が発生して計画実施が大幅に遅れている。

現在では、1万5000世帯が移転。対象地区の99%の土地の明け渡しも完了しているという。