◇今年は豊作、価格も高止まり
新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、多くの品目が輸出量を減らすなか、コメだけは、今年1~7月も順調な伸びを堅持できた。7カ月間のコメ輸出は390万トン、19億ドルに達し、数量では1.4%減少したものの、価格高騰のおかげで金額ベースでは10.9%増となった。海外でのコメ需要はさらに高まっており、今年下半期もさらに輸出は拡大しそうだという。

ベトナムの農業農村開発省の農産物加工・市場開発局の発表によると、今年7月のベトナムのコメ輸出は40万トンにのぼり、輸出額は1万9400ドルだった。今年上半期にベトナムのコメを最も多く輸入したのはフィリピン。ベトナムからの全輸出量の36.9%を占めた。1~6月の平均価格は1トンあたり487.6ドルで、前年同期比で13%も価格が上昇したことになる。

メコンデルタ各省でのコメの価格は7月前半に上昇した。ハウザン省では、今年の夏秋の収穫期のコメ収穫率は1ヘクタールあたり6トンに達し、前の収穫期よりも1ヘクタール当たりの収穫が500~700キロ増えた。農家からの新米は1キロあたり5300~6500ドンで取り引きされ、1ヘクタール当たりの収益は約3000万ドンだった。ドンタップ省では、夏秋の収穫が1ヘクタール当たり7トンにもなった。1キロあたりの価格は、普通米が5200ドン、長粒米が5500ドン、高級品種の香米が5900ドンだった。

コメの卸売価格も全体的に回復している。アンザン省では「IR50404」 と呼ばれる品種のコメのキロ当たり価格は200 ドン増え、1キロ 5000ドンで取引された。「OM5451」のは以前より300ドンも値上がりして1キロ当たり5200ドンに、「OM 6976」は5400ドン、普通米は1万10000ドン、香米は1万4500ドンの高値で、それぞれ取り引きされたという。

ベトナムの農業農村開発省の農産物加工・市場開発局のレ・タイン・トゥン副局長は、「塩害などが深刻だったにもかかわらず、ベトナムの穀倉地帯であるメコンデルタの今年夏~秋の収穫期は大豊作だ」と感触を語った。

◇秋冬収穫も明るい見通し
栽培がすでに始まっている今年の秋冬収穫のコメについて、農産物加工・市場開発局のグエン・クオック・トアン局長は、「メコンデルタのコメ市場も、コメ輸出も、いずれも見通しは明るい」と話す。

米国農務省の最新データによると、今年の世界のコメ生産は、前年比マイナス0.3%と微減し、生産量は4億9520トンになると予想されている。一方で、コメ消費量は前年度から1.3%増え、4億9040万トンに達する見込みだ。これは、メコンデルタ地方にとっては喜ばしい傾向だ。今年秋冬収穫期のコメ栽培の増加を促す動きにつながっており、農業農村開発省は、今年のコメ栽培面積を、前年度よりも5万ヘクタール多い80万ヘクタールまで増やすよう、メコンデルタ各省に指導した。

雨季に入ったメコンデルタでは、塩害被害をもたらす沿岸部河川への海水の逆流が緩和されている。国家水文気象局の予報によると、メコンデルタ南部での洪水も、9月末ごろをピークに減少するとみており、秋冬の稲作にとっては好都合な天候となりそうだ。これらを受けて、多くの省では、当初計画よりも、稲作面積を拡大。7月15日時点で、秋冬の収穫期に向けて21万5600ヘクタールの水田で苗付けが行われ、昨年度に比べると2.2%、水田面積が広がった。

次の収穫期も豊作とするために、農業農村開発省の穀物局は生産地に対し、特別な品種や高品質米の生産を勧め、収穫量や品質の向上、コスト削減などにつながる先端技術を導入するよう求めている。天候や疫病、害虫被害への注意を喚起するほか、高品質なコメを大規模で集中栽培するなどの農業方式の転換で、生産性と売上高を引き上げられるとしている。

ナムカントー大学のボー・トン・スアン学長は、「農家と生産協同組合、企業などを結び付けるバリューチェーンに基づいて、コメの生産を行っていくべきだ」と提案。「農家は協同組合を通じて「お互いに助け合い、組合は企業との接点を増やしていかねばならない。また、企業は率先して市場を開拓し、国とも提携しながら、ベトナムのコメのブランド創出に力を入れてほしい」と話している。