ベトナムの「テト」に欠かせない名産ザボン その①

ベトナムでは旧正月「テト」の期間中、多くの商品の販売価格が下がる傾向があるが、テトに欠かせない果物である「ズィエン」というザボンの値段はとても高い。販売業者たちは、テトの数カ月前からこのザボンの特産地「フー・ズィエン村」に赴き、仕入れに励む。

ズィエンと言う、良い香りのザボンは昔から「テト」や大切なお祭りには欠かせない果物とされてきた。しかし、この果物がどのような理由から、フー・ズィエン村で広く栽培されるようになったかは、明らかではない。

村とザボンに関する逸話がある。グエン朝の時代にバン村(現在のフー・ズィエン村あたり)に「チンさん」という偉い人がおり、テトのある日、村へザボン実を一個を持ち帰った。皆はそれを食べ、とても美味しかったのでザボンの種を植えた。数年後、村人たちが育てた木々に実がなり、その果実の味は大変甘く、香りも素晴らしかったので、王様に献上した-という。

また、こんな話もある。「ズィエン」というザボンはもともと別の場所で採取されていたが、1910年ごろ、フー・ズィエン村の住民が、親族に会いに行った際に、一本の木を村に持ち帰り、庭に植えた。数年後、その木にはたくさんの美味しいザボンの実がなった。木の枝は、村の人々に分けられ、やがて村中で、美味しいザボン実が採れるようになった。

色々な話があり、どれが正確な由来なのかは、定かではないが、偶然、どの話にもズィエンザボンの特徴である甘さ、良い香り、きれいな黄色の色彩などが登場する。
このザボンは旧正月の直前まで取り入れられるので、ハノイの人々は「テト」の間、お客様をこの大切な名産品を出して、もてなす。