プラスチック利用との決別を宣言 ダナン市 大手流通など参画

ベトナム中部の海沿いのリゾート都市、ダナン市はこのほど、市内のすべてのスーパーマーケットや複合商業施設で、分解しにくい使い捨てプラスチック包装使用を削減すると決めた。製造現場ですでに行われている環境配慮を、流通や家庭へと広げるねらい。2030年までに、生分解性プラスチックや天然素材の包装資材へと置き換えていく。

2021~2030年にベトナム国内で展開される「持続可能な生産と消費に向けた国家行動計画」の一環で、地元ダナン市の商工局主導で実現に乗り出した。同局は、持続可能な生産と消費に関する法的方針を決定するほか、環境に優しい原材料やリサイクル製品などの基準を制定、環境に配慮した包装を使った商品の流通や消費の促進活動などを展開する。

計画では、商品として販売する繊維や鉄、プラスチックなどの製品の製造段階で、リサイクル原料の使用を5~8%増やすことを目指す。さらに、アルコールやビール、飲料、紙、魚介類の加工食品なども、リサイクル包装材の使用を進めるとしている。

ダナン市内では、工業団地や手工芸村のうち、すでに80%で環境配慮型の製造に関する積極的な情報発信やキャンペーンが行われ、持続可能な製造や消費の喚起をしてきた。製造現場で実行されてきた、環境を汚染しない製造を今度は、市内の消費の中心地である店舗や一般家庭などへと普及拡大させていく考えだ。

◇ゴミ分別で学費支援も
すでに、ダナン市では、大手スーパーマーケットや大型ショッピングモールなどで、少しずつ商品パッケージや買い物袋を、環境配慮素材へと切り替えはじめている。例えば、大手流通のMMメガマーケットは、紙製の包装を展開。コープマートやビンマートは、生物分解性プラスチックの包装材を採用した。また、一部のスーパーなどでは、商品の持ち帰り用に、再利用ができるショッピングバッグを提供している。

ダナン市女性連合では、環境配慮の意識を、各家庭へと広げる活動を展開している。捨てる前に家庭でゴミを分別する、買い物時にビニール袋の使用を断る―など、家庭での「脱プラスチック活動」を推奨してきた。その活動の延長として、ダナン市のハイチャウ女性連合は、ゴミの分別やリサイクル素材の回収などで得た資金をもとに、貧困などで満足に学習できない子どもたちを支援する「グリーンドリーム奨学金」を設立。ゴミの回収活動一回あたりで600万~1000万ドンの収益があるといい、今年度は、ホア・トゥアン・タイ地区で、67人の学童や生徒に、50万~80万ドンの奨学金を与えることができたという。

ダナン市リエンチェウ地区のホア・カイン工業団地では、29企業が参加し、自然環境に配慮したさまざまな試みを4年間にわたって展開してきた。すでに228件の改善策が実行に移され、その投資総額は470億にのぼる。大きな投資ではあるが、その結果、263万キロワットの節電と5万1531立法メートルの排水削減、2793トンの固形廃棄物の減少につながったという。さらに、2180トンの石炭使用が節約され、5000トンもの二酸化炭素排出量の削減につながった。これらは、年間で150億ドンのコスト削減効果を生んでいる。

ダナン市では、このようなモデルケースの事例を広く広報し、社会全体で脱プラスチックを実現する動きを盛り立てていく考えだ。