成果を結ぶ農業組合活動 農家と企業の連携進む

ベトナムで農業協同組合が、農家と企業との接点をつなぎ、農家の農産物バリューチェーン参入を支援する重要な役割を果たしている。この将来性を最大限にするためには、的を絞った支援の展開と政策が必要だ。

◇農業組合の重要性
ベトナム北西部のソンラ省では、345の農業協同組合ができており、このうち200の組合は果樹の生産に特化している。このモデルが構築されたことで、ソンラ省は栽培農産物構造を果樹中心へと転換し、今ではベトナム最大の果物王国へと成長した。同省モックチャウ市104地区で活動するモックチャウ・パッションフルーツ農協は、その一例で、育苗や栽培における科学技術の応用、販売促進などの側面で組合員に支援を提供している。同農協は、モックチャウやバンホー、トゥアンチャウ、マイチャウなどの地域にまたがる300ヘクタールで270余りの農家が加盟し、主にパッションフルーツを栽培している。

組合員であるホアン・バン・チャップさんは、「農協が個々の農家を、パッションフルーツの栽培によって束ねてくれた。加盟農家らは、安全基準や製品消費などに基づいた組織的生産に関して、農協から教育を受けることもできた」と話す。このような活動の結果、一帯のパッションフルーツ農家の果樹園は生産量が多いだけではなく、品質も高く、1ヘクタールの農地あたりの果樹生産が2億ドンの収益を生むなど、生産性も高いものへと成長した。

同農協は、農家と企業の関係を結ぶ“橋渡し役”でもある。ソンラ省では37の企業が果物の加工工場に投資しており、企業と農家が手を結んで農産物バリューチェーンを築くといった、農協主導の生産体制構築が成果をあらわしているといえる。

農業農村開発省の傘下にある農業協同組合・農村開発局によると、2020年現在、ベトナム全国で1万7000の農業協同組合と57の農業生産組合が活動しているという。このなかで3913の組合は農産物の加工や消費を行う企業と連携しているといい、その割合は全体の22.8%に相当する。組合は一定基準を満たす農産物の生産や規制にもとづいた農産物生産の実施、適切な農地開拓、農産物バリューチェーンの結びつきの強化、各省の支援策の広報活動など、さまざまな局面で重要な役割を果たしている。

経済管理中央委員会の企業改革・研究開発課、グエン・チー・リュイエン副課長は、「自由貿易協定が手結され、ベトナムも世界貿易の統合に深くかかわるようになるなか、バリューチェーンにおける生産現場と企業の関係構築は、持続的な発展に向けた最適な選択肢と考えられるようになってきた」と話す。「農家により競争力のある作物の生産を促したり、生産コストを圧縮したりといった努力を求めることにつながった」。

◇柔軟な支援策展開を
ベトナム協同組合同盟の傘下にある組合発展局のファム・ミン・ディエン副局長によると、2015~2020年の5年間で、国は農業組合のさまざまな支援策を実施にうつしたという。このうち6件は総合的な支援策、2件は税制優遇と手数料免除、5件は農協に対する追加支援と優遇措置だった。

これまでに、3兆4300億ドンの予算が投入され、国の支援施策の恩恵を受けた農業協同組合は1万9000組合にのぼる。毎年平均3000の農協が恩恵を受けている計算で、これは全国の農協の16%に達する。今後さらに、農協が発展していくためには、より柔軟、現実的な施策で、それぞれの組織の発展具合に見合った支援内容の提供だ。また、「資金の支援も、タイムリーに行われる必要があり、農協の自治を促進するのに適切なものでなければならない」というのがディエン副局長の考えだ。

「2021―2030年の集団的な経済発展戦略」を承認する首相決定案では、ベトナムの農業協同組合数を、2030年までに現在の約3倍の4万5000組合に増やし、農業集団を14万、協同組合連合を340にまで増やすとの目標を設定した。この計画によると、ベトナム全土で約200万人が農業集団のメンバーに、また800万人が農業協同組合員になる予定だ。 また、2030年までに5000以上の農業協同組合での農産物生産でハイテク技術を応用するなど、農業の近代化の足がかりにも農業組合を活用する考えだ。