ハノイで進むプラごみ削減活動、生産現場にはなお課題

■環境問題
ハノイ市天然資源・観光局は、市の商工局と協力して、環境負荷の低い製品の導入に力を入れている。プラスチックごみによる被害を人々に周知し、ナイロン袋や非分解性のプラスチック製品を使う習慣を変えるのが目的だ。

写真㊤=多くのスーパーマーケットでは、プラスチック製の食品ラップに代わって、バナナの葉が使用されている

ハノイ市で1日に発生する家庭ごみは5500~6000トンで、そのうちプラスチックごみは8~10%を占める。プラスチックごみは分解しにくいため、土壌や地下水、海洋環境に長期にわたって深刻な影響を与える。

例えば、プラスチックが食品に溶け込み、長い時間をかけて有害物質が蓄積したり、水中に混ざることで水生生物の呼吸を妨げる可能性がある。有害物質は魚によって吸収されて、最終的には人間の体内に取り込まれることもある。また、プラスチックを不適切に燃やすと、温室効果をもたらし、地球温暖化の原因ともなる。

ハノイ市人民委員会では、2025年に向けて、プラスチックごみとナイロン袋の管理に関する計画を発表した。これに伴い2019年11月以降、市人民委員会の直属の組織では、ナイロン袋や使い捨てプラスチック製品は使用していない。


プラスチックごみは、土壌や地下水、海洋環境に深刻な影響を与える

ハノイ市天然資源・観光局は市商工局とともに、スーパーマーケットや店舗、企業に対し、ナイロン袋に代わって環境負荷の低い製品を使用するよう求めている。また、テトラパックベトナムやラーゴムベトナム、多数のリサイクル団体とともに、市内の学校で牛乳パックを回収、分別、リサイクルする事業も始めている。2019年から実施しているこの事業では、今年7月までに、約240トンの牛乳パック(2500万パック相当)が回収された。

■包括的な対策

こうした積極的な取り組みがある一方で、人々の習慣を変えるのは難しく、プラスチックごみ削減に向けて抜本的な対策を講じていない地域もある。

ハノイ科学技術協会連盟の副会長であるヴイ・ティ・アン准教授は、「プラスチックごみの削減は難しい問題であり、包括的な対策と地域の関与が必要だ。代替可能な材料を見つけて、プラスチックごみに対する消費者の意識を高めなければならない。国の機関は、(プラスチックの)研究段階から生産、使用に至るまでの過程やそれに対する政策を構築しなければならない」と指摘する。

しかしながら、生産技術の変更は複雑な作業で、例えば、繊維や履物の製造業では、廃棄物の9割がプラスチックだ。そのため国は、税の優遇措置や海外技術の国内企業への導入などによって、メーカーが技術革新を行えるよう支援を行う必要がある。

ハノイ都市環境会社のファム・カオ・タン副社長は、「市場が規制できない廃棄物処理に対する輸出税や補助金といった政策は、廃棄物の分別、収集、リサイクル、再利用の促進に貢献するだろう」と述べた。

また、ハノイ中小企業協会のリン・ティ・ガン会長は、「企業が環境に配慮した包装を導入する際には、無利息融資が用意されるべきだ。環境にやさしい袋を使用するスーパーマーケットには、法人税の減税といった措置が必要だろう」と語った。