域内利用の23%を再生可能エネルギーに ASEAN大臣会議で目標設定

東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10カ国は、2025年までに、「域内で使用する全エネルギーの23%を再生可能エネルギーに転換させる」とする目標を設定した。先月末、ベトナム主催で開催されたオンライン会合で、各国のエネルギー大臣らが合意。目標達成のための努力の継続を約束し、各国で実現に向けた努力が始まっている。

◇エネルギー面の連携強化が成長の柱
過去5年間の変化をみると、ASEAN各国の協力が進んだことによって、GDPに対するエネルギー消費量を示すエネルギー強度(Energy Intensity)は、2005年と比べて21.4%削減できており、2020年の目標だった20%減を達成した。

具体的な動きをみると、ミャンマー、タイ、マレーシア、インドネシア、シンガポールとベトナムの間で、総延長3631キロに及ぶガスパイプラインが敷設された。また、液化ガスセンターが9カ所に設置され、計3875万トンを扱うことができるようになった。域内の電力系統をみると、年内に1万800メガワットを扱う電力システムが完成する予定で、今後は電力供給が1万6000メガワット規模へと拡大する見込みだ。

これらに加え、ラオス、タイ、マレーシアとシンガポールの間では、多国間でのエネルギー交換プロジェクトが試験導入された。2018年1月以降、タイの電力系統を通じたラオスとマレーシア両国間での電力売買がすでに始まっているなど、成功事例が次々と積み重ねられている。これらの努力によってASEANのエネルギー構造は徐々に改善されてきており、「2025年にエネルギー供給の23%を再生可能エネルギーにする」という目標設定にまでこぎつけた。

このような成果はあるものの、ASEAN共同体のエネルギー面での安全保障をより確実なものとし、持続可能な発展を実現するためには、「域内のエネルギー政策を支える柱として、加盟各国の協力と連携を強化する必要がある」とベトナム商工省のダン・ホアン・アン副大臣は指摘した。

「ASEAN地域の持続可能な開発に向けたエネルギー転換」をテーマに11月、開かれた第38回ASEANエネルギー大臣会合(AMEM)では、「自然環境に配慮した持続可能なエネルギー市場を開発する」ということが目標に掲げられた。

大臣会合後の記者会見で、アン副大臣は、「われわれは新型コロナウイルスの世界的感染拡大が、経済発展やエネルギー分野にもたらした前代未聞の課題に直面している。だが、各国の大臣らは、持続可能なエネルギーを活用する将来像の実現に向けて、歩みを続けると約束する」と語った。

会合と同時に、「2021~2025年ASEANエネルギー協力に向けた行動計画(APAEC)」と、「第6次ASEANエネルギー展望」も、文書として発行された。このうち、エネルギー協力に関しては、行動計画(APAEC)第2フェーズという位置づけで、改革と域内の協力を通じ、エネルギーの移管促進と回復の強化を目指している。

具体的な域内でのエネルギー協力では、行動計画の実現▽ASEAN横断ガスパイプラインの敷設▽エネルギーの効率化と保存▽再生可能エネルギーの使用▽地域で連携したエネルギー関連政策の確立▽環境に配慮した石炭使用の検討▽民間による原理職エネルギー利用の研究推進―の7つの計画が提示されている。

◇多国間のエネルギー統合で合意
今回の会合は、ラオス、タイ、マレーシア、シンガポールの間で、「エネルギーの相互統合計画(LTMS-PIPプロジェクトの第2フェーズ)」の覚書への署名が行われ、ASEAN域内でのエネルギー協力にとって大きな転換点となった。

アン副大臣は、2018年にラオスとタイ、マレーシア間を同計画の第1次フェーズが結び付けた成果を挙げ、「さらに、シンガポールが加わった第2フェーズでは、2022年までに電力供給能力を300メガワットにまで引き上げることにしたと紹介し、これが大きな成功事例になるとの見通しを示した。

今後、ASEAN加盟各国の間でさらに、多国間でのエネルギー交換の計画が実現することになるとアン副大臣は分析。「域内のエネルギー売買市場の発展も、大きく促されことになるだろう」と指摘した。