伝統工芸品の振興を 国内外で高まる人気

ベトナム各地の工芸村で作られる工芸品や美術品は、国内市場での人気だけでなく、重要な輸出品にもなっている。コロナ禍においても、売上は好調な伸びを記録する。工芸品の市場拡大とともに自国文化に対する誇りにつなげようと、商工省では数々の振興策を展開している。

有形無形の多彩な文化と有するベトナムは今や、世界に誇る伝統工芸品の産地となっている。近年の急速な近代化、都市化にもかかわらずうるしや焼き物、刺繍、織物、竹細工、籐、金銀細工など、多くの工芸品が伝承され、今なお盛んに製造される。工芸村や作家の名前は、国内だけでなく海外でも知られるようになってきた。2019年、工芸村の売上高は23億50000万ドル(約240億円)に。2020年1-9月は、新型コロナウイルス流行にもかかわらず、前年同期比10%の伸びを記録した。

現在、商工省は地域再生に向けた国家的プログラム作りに向けて、中央と地方当局の調整を進めている。伝統工芸の支援、振興だけでなく生産やマーケティングにおける近代化もテーマにしていく考えだ。また、国産品愛用運動「ベトナム製品を買おう(Buy Vietnamese Goods)」の予算の中から75億ドン(約3300万円)を使って、代理店や団体、組合との連係も進めている。

シルク製品で知られるハノイのハドン区にあるヴァンフック・シルク・ビレッジで、障害者らとともにシルクの端切れを使ったアートを制作するブン・アート協会は、同省の進めるプログラムへの参加に大きな意義を見出している。ブン・アートの創始者でもあるハノイ地区障害者協会のレ・ビエット・クオン会長によると、さまざまなイベントへの積極的な参加を通じて、ブン・アートは多くの消費者に好意的に受け入れられるようになったという。作品は、ハノイ人民委員会の進める「一村一品運動」の4つ星を獲得し、村民20人の仕事の創出にもつながった。

同省は、安定した市場作りの一環として工芸品の販売施設の設置にも注力。国内市場局の統計によると、2014年以来、100カ所以上の販売所が設置され、地域の美術品や工芸品に触れる観光スポットして人気を呼んでいる。ラオカイ省やハザン省などの販売所には日々、多くの観光客が訪れている。

貿易の振興や販売所の設置、効果な的宣伝などは、工芸村で働く多くの人の収入の増加につながっている。地域の雇用創出や失業率低下、収入の増大のためにも、今後は、工芸品のブランド化を進める振興策が求められている。