ホーチミン市、二輪車の排気ガス規制開始へ 低所得者層への影響懸念の声も

ホーチミン市が、同市内の700万台近い二輪車を対象に、今年から試験的に排気ガス規制を始める。環境汚染対策としては喜ばしいことだが、ベトナムでは低所得者層の多くが二輪車を使って生計を立てているため、専門家らは、検査費などの経費増が彼らの生活を圧迫しかねないと懸念している。

◇目的は大気汚染の低減
今回の自動二輪車の排気規制プロジェクトは、ホーチミン市交通局、ベトナム自動二輪車工業会(VAMM)と交通科学技術院が共同で行った、大気汚染に関する総合評価をもとに立案。二輪車の排気ガスを規制することで、深刻化するホーチミン市の大気汚染を解消し、将来的には交通渋滞の解消などをねらい、個人所有の二輪車の市内中心部での走行制限につなげたい考えだ。

今回、プロジェクトの開始を前に、ベトナム祖国戦線ホーチミン支部が、市民や専門家からの意見聴取を行った。会合では、同支部のチャン・フー・フオック副支部長がプロジェクトの概要を伝え、「ホーチミン市の大気汚染の主原因は排気ガスだ。その解消には、二輪車の排気点検実施が不可欠だ」と訴えた。

説明によると、二輪車対象の排気規制は、今年から試験的に導入される予定。排気検査のための規則が定められ、検査場88カ所の設置が計画されている。

プロジェクトでは2022~2023年を政策整備にあて、ホーチミン市の二輪車全数を評価してデータベース化し、1台の所有に対して5万ドンを徴収するという。低所得者層は収入に応じ、この費用納入を免除することも検討している。排気検査の対象となるのは、5年以上走行している二輪車で、排気ガスの規制濃度については、各地域や自治体ごとに基準を設けるとした。

続く2024~2025m年の時期には、排気検査を拡充するために、ホーチミン市1区、3区、5区と10区を中心に、さらに78カ所の検査場が追加される。これらの結果、2026年以降は、ホーチミン市の13の地区で、二輪車の排気ガス規制が徹底されることになる。2030年までのプロジェクト総費用は、5530億ドンとなる見込みだ。

このような説明に、課題も浮き彫りとなった。

ホーチミン市技術大学のファム・スアン・マイ准教授は、「今回の評価で検査された自動二輪車はわずか1万682台だった。有効性の結論を出すには、少なすぎる。プロジェクトを信頼性のあるものにするためには、少なくとも、ホーチミン市の全二輪車の5~10%を検査することが必要ではないか」と指摘した。

◇二輪利用者の負担増も懸念
会合に出席した専門家や、各地域の市民の代表者らは、「地域の環境保護や大気汚染の低減につながる」として、プロジェクトの意義を認めつつも、実施前の問題点精査などを求める声が相次いだ。

弁護士のチュオン・ティ・ホアさんは、ホーチミン市交通局に対し、二輪車の排気検査の効果についての情報や今後の長期的な方針を、市民に広く開示するよう要求。大気汚染解決のためには、二輪車だけではなく、四輪自動車対象の追加対策も検討する必要があると指摘した。「これらの措置を実施する際の法的根拠も、明示する必要がある。二輪車を活用して生計を立てている低所得者層に対してどう対応するのかも、明らかにしてほしい」と求めた。

これに対し、ホーチミン市交通局のブイ・ホア・アン副局長は、「当局や関連機関は、段階ごとに追加のデータや方針転換などを提示する。また、低所得者は費用納入を免除することなども検討している」と説明。プロジェクトの実現で時間と費用を削減するために、さまざまなIT技術を応用することや、排気検査料金の見直しを検討することも約束した。