廃棄プラ問題解決へ、国家的取組みが始動 政府、経済界、市民らが協力へ

自然環境の脅威となりつつあるプラスチックごみの問題に取り組む枠組として、「ベトナム国家的プラスチック・アクション・パートナーシップ(NPAP)」が、昨年末に発足した。世界的な課題である廃棄プラスチック問題の解決に向け、ベトナム政府と経済界、草の根活動が国際的環境保護組織などと手を組み、海洋保護区などの環境回復や使い捨てビニール袋の排除などを目指す。

NPANは昨年12月23日、ベトナム天然資源省と、世界経済フォーラム傘下で廃棄プラスチックの課題解決を図る「グローバル・プラスチック・アクション・パートナーシップ(GPAP)」が共同で立ち上げた。活動について、チャン・ホン・ハー天然資源相は、「廃プラスチックによる環境汚染は、世界でもっとも解決を急ぐ必要のある環境課題のひとつだ。ベトナムの工業化と都市化、そして商業地、観光地、工業地域などの急速な発展が、問題の悪化に大きく寄与したことは間違いない」と、市民や企業関係者らに協力を呼びかけた。

天然資源省などによると、ベトナム国内で一年間に処理される固形ゴミは、約2200万トンに達する。このうち約10%がプラスチックごみで、その量は年々増え、環境に対する脅威となっている。ベトナムの海や川に流れつき、堆積するプラスチックゴミの量が、この10年間で倍増したとの専門家の指摘もある。

一方で、プラスチック製造業は、ベトナムにおいてこの10年間にもっとも急激に成長した産業分野であり、ベトナムの経済成長を支えてきた柱でもある。人口一人当たりのプラスチック消費指数は右肩上がりで、1990年には年間3.8キログラムだったものが、2015年には41キロとなり、現在では年間54キロに達している。国内のプラスチック製造企業は2000社にのぼり、このうち450社がプラスチック製の包装材とビニール袋の製造業者だ。

NPAPでは、持続可能なプラスチックの生産と消費の両立を実現させ、ベトナムを理想的なモデル地域にすることを目標としている。効率の良い廃棄プラスチックの管理や処理方法を探ると同時に、すでに廃棄されたプラスチックごみの環境への影響を減らす方法などを模索する。

◇地域の協力が不可欠

廃棄プラスチックによる環境汚染問題の取り組みにおいて、先駆者的存在であったベトナムでは、その取り組みが社会から幅広く支援を受け、市民らの動員や協力も得られている。
だが、ベトナムがその目標を達成するには、さらに多くの市民の力が必要だという。プラスチック製品の再利用や再活用を、生涯を通じて、日々実践していくよう、市民らひとりひとりに、大きな行動変革を促す必要がある。

第一に必要なのが、プラスチック製品を製造する事業者の責任に関する法律的な枠組みの構築だ。プラスチック素材や微細プラスチック片の使用基準の設定や規制、この分野での調査研究の促進、プラスチックの製造やリサイクルにかかわる技術の移転や先端技術の応用などの実践が企業に課せられる。2020年、ベトナム国会が制定した環境保護法が、これを加速させる契機となった。廃棄プラスチックの削減、ビニール袋の再利用や素材としての再活用、プラスチックごみの処理方法などに関するこの法律は、プラスチックごみの削減と管理強化の法的基盤となり、国際的な協力もしやすくなった。

続いて、人々が問題の重要性を自覚し、実践することが必要だ。プラスチック製品を正しく、持続可能な方法で利用する方法を教育したり、家庭でのゴミ分別の重要性などの知識を伝達したりするほか、プラスチックやビニールの袋などの利用を最小限に抑え、自然分解性素材を率先して選ぶよう促すなど、地域や市民の協力が不可欠だ。

科学研究の側面では、ベトナムは世界各国の協力や支援を要請している。廃棄プラスチックの削減についての情報や経験の共有とともに、ゴミの管理やプラスチック製品の持続可能な利用方法のノウハウなど、技術革新や知識の移植が求められる。

ベトナムは海洋国家であるため、問題は国内だけにとどまらない。漂流し、海岸に流れ着く海洋プラスチックごみの除去も大きな課題となっており、ベトナムの美しい海や豊かな森林から廃棄プラスチックを除去するための、地域的、国際的な協力のあり方も探っていく必要がある。