河川用の漂流ゴミ収集装置が稼働 紅河デルタのナムディン省

紅河デルタのナムディン省で1月28日、河川や水路などに漂流するプラスチックゴミなどを回収できる画期的な装置「トラッシュ・トラッパー」が稼働し、記念の式典が行われた。ベトナム水生生物保護・地域発展センター(MCD)が、ナムディン省自然環境局や、設置場所となったナムディン市チャン・テ・スオン区の人民委員会などと協力して実現させた。

この装置が設置されたのは、ハノイから南へ約100キロ、トンキン湾にそそぐ紅河流域に位置するナムディン市チャン・テ・スオン区。ナムディン省における「海洋プラスチック汚染低減プロジェクト」の一環として、アメリカ合衆国国際開発庁(USAID)が一部開発の資金を援助した。また、アメリカに本拠地を置く自然環境保護の非政府組織、オーシャン・コンサーバンシーも、同団体が展開に協力する「SPLASH(紅河デルタ戦略的プラスチックゴミ削減)プロジェクト」を通じて協力した。これらのプロジェクトは、水生生物保護・地域発展センターが、ナムディン省自然環境局やその他の国家組織などと連携しながら、展開してきたという。

式典には、国家行政レベルの担当者や地域の関係者らとともに、装置が設置された地域の住民約100人も招待された。

河川や水路のゴミを収集する装置は、世界で複数発明されているものの、まだ多くは実験的段階だ。実用化され市場に出たものも、コストが高い、量産できないなどの課題を抱えている。そこで、ベトナムでは国際的な援助も受けて、安価に製作や運用ができる河川用のゴミ収集装置「トラッシュ・トラッパー」=写真㊤=を開発。プラスチックゴミなど河川を浮遊し漂流するゴミに着目し、これらを収集する画期的な技術を開発した。

1年間紅河流域の各地で試用した結果、装置は漂流するゴミ約18トンの収集に成功。装置の有用性と効果が証明されたことから、ナムディン市に常設し、同市を流れるダオ川のゴミ収集に使われることとなった。浮遊するプラスチックゴミを河川で集めて回収することで、川から流出し、海洋でも深刻化しているプラスチック性廃棄物の最小化につながるとされた。

装置の設計や製造、それに伴う調査などは、水生生物保護・地域発展センターとナムディン省環境局が主導で実施。国内外の専門家、地元行政の担当者、地域住民らも加わって実現にこぎつけた。専門家らの評価とベトナム内陸河川管理当局による実用化承認を経て、ナムディンにおけるゴミ管理施策の一環として川岸への設置が許可された。

設置式典で、水生生物保護・地域発展センターのホー・ティ・イェン・トゥ副局長は、「この装置が、ダオ川のゴミ削減の成功につながると信じています」とあいさつした。

ナムディン省自然環境局のファン・バン・フォン副局長は、装置の設置に尽力したセンターと専門家らの支援に感謝の意を述べ、「初期の試験結果で、装置の効果は実証された。われわれはトラッシュ・トラッパーの導入を歓迎しており、環境保護プログラムの支持や資金援助を得て、将来的にはさらに数を増やしたい」と述べた。

資金提供と技術アドバイザーとしての立場から、オーシャン・コンサーバンシーのプラスチックゴミ部門を統括するシェベール・ボルトメール部長は、「画期的な手法で紅河流域のプラスチック汚染を削減するプロジェクトを支援できて、とてもわくわくしています」とあいさつ。ゴミ問題の危機を解決する技術は、「地元開発、地元管理」が同団体の信念だといい、「さらに装置はコストが安価でなければ継続できないが、今回開発された装置は、まさにそれらの条件をすべて満たすものだ」と絶賛。「危機的な状況に陥っている環境のプラスチックゴミ汚染を劇的に減らしてくれると同時に、われわれに知識集積と科学的な調査研究進展の機会を提供してくれるだろう」と期待を示した。

センターでは今後、技術的な側面の改良や、関連する規制などへの適応をしつつ、トラッシュ・トラッパーを運用し、専門家らとのともに運用をモニタリングする計画だ。前述のプロジェクトなどを通じて、自治体や地元住民らの要望に応え、他の地域にも設置件数を増やす考えだ。将来的には、紅河デルタ一帯の河川や水路にトラッシュ・トラッパーのネットワークをはりめぐらし、ナムディン省の水源のプラスチックゴミ削減を目指す。ベトナム全土での水路や海洋でのプラスチックゴミ汚染は深刻な問題となっていることから、この取り組みの成果が、全国的にも注目を集めそうだ。