拡大生産者責任の強化でEUと協力 循環型社会実現に向け企業の参加促す

ベトナムは欧州連合(EU)と協力し、循環型社会の設計と実現を目指している。環境保護法(EPL)のもとに制定された拡大生産者責任(EPR)の原則を強化するため、生産者や消費者の責任にある行動を求め、今後さまざまなリサイクル政策が導入される。

拡大生産者責任は、製品に対するメーカーの責任を、廃棄物に至る段階まで拡大することを基本とした環境政策アプローチだ。メーカーが廃棄物になった後の製品管理にも責任を負うことを求められることから、企業は使用後製品の管理コストを削減しようと、廃棄物を削減し、リサイクル活用にも力を入れるようになるとされる。

このアプローチは、ベトナムの廃棄物の管理にかかる経済的負担を分担すると同時に、リサイクルや再利用による新たなビジネスチャンスの提供にもなりうる。また、現状では回収やリサイクルがなされず、海洋廃棄物となって問題視されるプラスチック包装材問題の解決策としても、期待が高まっている。

ベトナムでは2020年に環境保護法が改正され、製品の製造者に包装資材などの回収とリサイクル活用を課すなどの、拡大生産者責任の基本方針が盛り込まれた。メーカーはリサイクルのシステムを独自に組織するか、ベトナム環境保護基金(VEPF)に資金提供を行い、同基金が展開する廃棄物リサイクルを活用するか選ぶことができる。対象とされる商品群は、電池や蓄電池▽電子機器▽タイヤ▽潤滑剤▽車やバイク▽包装資材―の6つとされた。

ベトナムにおける拡大生産者責任の実現に向け、ベトナム天然資源環境省は、欧州連合やフランス国際協力局などに協力をあおいだ。

在ベトナム欧州連合代表部のルイ・ルドビノ主席参事官によると、循環型経済は、「削減・再利用・リサイクル」の「3Rの原則」に従い、効率的で持続可能な方法で天然資源を使用し、管理していく経済モデルだ。欧州連合の考えるリサイクル政策の要は、「企業が積極的に、循環経済に参加するよう促すこと」だという。

これを受け、ベトナム初となるEPRをテーマにしたワークショップが開催され、ゴミとなった包装資材の管理における製造者責任について検討が繰り広げられた。

天然資源環境省のファン・トゥアン・フン行政局長は、「EPRのメカニズムが資金の流れと多国間協力を強化し、循環型経済の基盤となるゴミのリサイクル率を高めることを確信した」とした。同局は、ベトナムにおけるプラスチックゴミや固形ゴミを対象に、実行が可能で現実的、効率的な拡大生産者責任の規制を実現させようと、製造企業とリサイクル業者を含め、関係部局と緊密に連携している現状を説明した。

また、ワークショップでは、これまでにベトナムで行われてきた非公式のリサイクル収集システムに関する調査結果などが共有され、それをもとにした新たなリサイクルシステム構築の可能性を探った。

草の根組織としてリサイクル回収を展開してきた「ベトナム・リシンキング・プラスチック・プロジェクト」のマネジャーを務めるファニー・クアタンプ博士によると、「市民らが組織した非公式の回収方法は、今後もベトナムのリサイクルや分別収集の根幹となる」と説明。ゴミとなった包装資材の管理を改善するためには、簡単に情報交換ができる仕組みをつくり、メーカーとリサイクル業者、収集を行っている団体などが、相互理解をはぐくむことが必要だ」と強調した。これを受けて、天然資源省は、関係部局や団体への相談や連携を継続することを約束した。

現在、昨年改正された環境保護法の詳細を具体的に定める政令は、検討のため政府に提出されている。天然資源環境省は今年10月にもこの政令を公布、2022年1月1日に発効させる予定だ。