進む農業分野の官民連携 茶葉業界で品種改良や認証制度など成果

行政と民間が協力する官民連携(PPP)方式は、ベトナムでも様々な分野で試みが始まっている。なかでも茶葉の生産分野では、5年前から生産者と行政がいっしょに品種改良や認証制度の制定などに取り組み、成果を上げている。重要な輸出品目の一つに成長しつつあるベトナム産茶葉が、品質を高め、国際市場での地位を確立するうえでも、大きな役割を果たしている。

ベトナム茶葉協会(VITAS)によると、ベトナムは茶葉生産量で世界第7位、輸出量では第5位で、世界の74の国と地域に製品が輸出されているという。茶葉は国内の34の省や市で栽培され、栽培面積は12万3000ヘクタールに及ぶ。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大にもかかわらず、2020年の輸出は安定しており、輸出量が増えた国さえあったという。製品の内訳をみると、全体の51%が茶葉を発酵加工した紅茶など、48%が緑茶、1%がその他のお茶製品だった。

ベトナムの茶葉製造業界における官民連携は、5年前に始まったており、「以来、さまざまな成果を得ている」と、ベトナム茶葉協会のグエン・チー・アイン・ホン副会長は自信を見せる。

農業農村開発省農産物局のレ・バン・ズック副局長も、「茶葉の生産改良などが、期待通りに進んでいる」と評価。20年計画で取り組みを始めた茶葉の品種改良プロジェクトは、すでに30種もの新種の茶を生み、栽培しやすく品質もよいこれらの新種が、国内の茶葉生産の約60%を占めるまでに成長していると紹介した。

茶葉生産の官民連携には、茶葉農家と茶葉協会、関連当局とともに、森林を破壊しない手法で生産される農産物の国際認証「レインフォレスト・アライアンス」や、ベトナムで自然にやさしい農業を促進するVECO、持続可能な貿易を推進するIDHなどの国際組織も加わっている。これらの組織の参加によって、持続可能な発展を達成するために不可欠な、生産地をたどるトレーサビリティなどが実現し、ベトナム産茶葉への安全面での信頼度も高まった。

農業農村開発省の植物保護局も、5年前から官民連携を推し進めている。同局のプログラムにはベトナム茶葉協会とともに12の民間企業が参加し、植物保護局内には「茶葉専門チーム」が設けられた。グエン・キー・ズオン植物保護局副局長は、「農家が安心して使える殺虫剤の種類や使い方を指導など、茶葉の品質は維持しつつ、安心安全と衛生面での保証にもつながっている」と話す。

◇さまざま認証制度実現
食の安全面の保証だけではなく、茶葉を輸入する国々が注目するのは原産地証明や生産地、生産手法などの認証だ。特にベトナムが多くの自由貿易協定に名を連ねるようになってからは、なおさら厳密に求められるようになった。そこで、農業農村開発省植物保護局は、ベトナム茶葉協会を含めた複数の組織と共同で、タイグエン省とソンラ省で生産された条件に合致する茶葉だけに、生産地と生産手法を証明する認証マークを付与する新たな認証制度の実証実験を始めた。

茶葉協会によると、茶葉分野での2021~2025年の期間の官民連携のねらいは、殺虫剤の使用の厳密な管理とサプライチェーンの効率化、そして、製品の品質改善だという。業界からは20の企業が、自社製品で「持続可能な生産方式でつくられた最終製品」としての公的認証を得ることを目指しており、そのために2000軒の農家の教育と指導に力を入れている。さらに、地域認証では、さらに多くの企業が今後3、4年での取得を目指している。自社製品で、高い品質を要求する目の肥えた国際市場を認めさせるには、高品質の製品生産を継続して提供するという難しさがあることを、これらの企業が自覚することが今後の課題となりそうだ。

ベトナム国立農業普及センター(NAEC)のレ・クオック・タイン所長は、「過去10年間に、官民協力は大きく加速した」と称える。同じような動きは、茶葉だけでなく、コーヒーやさまざまな果物、野菜、魚介類やコメなどにも広がっており、肥料や農薬などの化学分野にも波及している。「官民連携の動きは、さまざまな投資を引き付ける動機づけともなる。農業発展の管理においても、国の役割が存分に発揮できるようになり、重要で効率の良い解決策だ」と話す。

ベトナムの茶葉生産業界では、安全な農薬使用や持続可能な生産の達成を目標に掲げ、2021~2025年の5年間に、政策対話の実施や基金の設立など、官民協力をさらに発展させる計画だという。