ベトナムを緑に 2025年までに10億本を植樹 ペトロベトナムなど企業賛同の動きも

今年から2025年にかけての5年間に、ベトナムの緑化改善に向けて全国で10億本の樹木を植樹する計画を、今年2月、当時のグエン・スアン・フック首相が提唱した。国営ベトナム石油ガスグループ(ペトロベトナム)がこのほど、紅河流域のタイビン第2火力発電所(タイビン省)に1000本の木を植えるイベントを行うなど、企業にも賛同の動きが広まっている。

緑化計画は地球温暖化防止や災害対策などの目的のほか、林業や木材加工業によるベトナム経済の活性化をねらうもの。5年間に、都市部や郊外に6億9000万本を植樹するほか、3億1000万本は森林保護地区や林業を展開する予定の特別生産地域に植えられる予定。今年は、1億8200万本が植樹される予定で、来年以降は毎年平均2億本あまりを植樹していく。

この全国規模の植樹キャンペーンは、2月23日、北部山岳地帯のトゥエンクアン省で、当時のグエン・スアン・フック首相(現国家主席)による植樹で幕を開けた。トゥエンクアン省は林業が盛んで、森林を保護しながら新しいスタイルの農村地帯を構築し、林業を基盤にした経済発展を進めている。

トゥエンクアン省は、毎年1万ヘクタール以上で産業林の計画植林が実施されており、森林面積が土地面積の約65%を占め、これは全国で第3位だという。近年急速な成長を見せ、ベトナム経済をけん引するようになった木工産業の拡大する需要に対応するために植林が行われているが、全森林のうち約4万ヘクタールがドイツを拠点とする国際的な森林認証機関、森林管理協議会(FSC)の認証を得ている。トゥエンクアン省は、この認証数でベトナム第1位を誇る。同省内で計画植樹された材木から作られた木製品は、米国や欧州などの市場が要求する厳しい基準をクリアしている。

このような動きは林業従事者らの収入を劇的に引き上げた。植林された森林からの年間木材生産量は以前の約3倍に増えた。生産される材木は年間約80万立方メートルを越え、この地域に8カ所ある材木加工場の需要に応えている。

政府は、材木や材木加工品などの輸出総額を今年は140億ドルに、さらに2025年には200億ドルにまで増やすことを目指し、自然環境の維持のためにも国土における森林面積を42%で維持しようと、全国各地の地自治体と連携している。この動きはベトナムを、計画植林によって生産される持続可能な木材を活用した木工製品の世界的な生産者へと成長させているという。

活動に賛同したペトロベトナムグループは、企業として各地で植樹を展開しており、先日、タイビン省のタイビン第2火力発電所でも植林が実施された=写真㊦。植林プログラムへの参加を社員らにも呼び掛けたところ、職員らが作るペトロベトナム青年連合なども賛同。敷地内での植林作業やその後の世話などに、職員らが積極的に取り組むようになっている。

今年3月末までに、ペトロベトナムガス合資会社など同グループ企業内部にも活動が拡大しており、全国各地の工場や職員用住宅の敷地などで植樹が行われたという。

植樹の式典で、タイビン第2火力発電所のホアン・コック・ブオン理事長は、「今まで環境を保護してくれていた森林の損失が一因となり、ベトナムはかつてないほど、自然災害や異常気象の深刻な影響を受けるようになった」と指摘。「私たちは、エネルギー企業として、地球環境汚染と気候変動なかで木々が果たす重要な役割について、認識をさらに高める必要がある。排気ガスなどの規制に加え、植林を行うことで汚染を低減し、持続可能な開発を確実にできるよう、ベトナムの生態保護に協力したい」と語った。