国産の医療廃棄物処理装置を開発 国立機械工学研究所、民間企業Urenco13と協力

ベトナム国立機械工学研究所(NARIME)はこのほど、民間企業と協力し、医療廃棄物を1日当たり約4トン処理できる高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)装置を開発したと発表した。この国産の処理機は、海外製の装置同様、ダイオキシンやフランなどの環境汚染物質の排出が抑制でき、さらに処理時間の短縮、装置製造コストの抑制などの利点があるという。

◇代替の国産装置を開発
開発された新装置は、処理時間が短縮され、世界的メーカーが製造した高圧蒸気滅菌型の医療廃棄物処理装置と比べても、処理が15~20%も効率化された。価格面でも、海外製の約4分の1に抑えられたという。

開発にあたったUrenco13(旧名Environmental Equipment and Material)社は、毎日5トンもの医療廃棄物を扱う医療廃棄物の処理会社だ。かつては、燃焼処理をしていたが、「燃焼による有害物質排出を防ぐため、処理方法を改良する必要に迫られた」と、同社のトン・ビェット・ズン副社長は説明する。

同社は2016年に、国際組織から米国製の高圧蒸気滅菌装置を譲り受けた。高温で飽和蒸気を発生させることで、細菌や有害な病原菌などを除去する優良なものだが、購入するとなると価格が極めて高い。さらにメンテナンスや部品交換の費用が掛かりすぎることから、ベトナムでは、この種の装置の導入がためらわれることが多かった。

そこで、同社は、エンジニアのグエン・バン・ビン氏の協力を得て、国立機械工学研究所と提携し、同じ高圧蒸気による滅菌技術を応用し、1日当たりの処理量が4000~5000トンと大きい新型の装置の設計と国内製造に乗り出した。欧米の技術を研究したうえで、ベトナムの環境や、企業ニーズなどに応じるものへと適応させたという。

◇米国製品に負けない品質
完成した装置は、容量が9000リットルの高圧蒸気滅菌装置と、480リットルのボイラーと制御室からなる。装置の中に入れられた医療廃棄物はまず、高温の蒸気で殺菌処理される。焼却処分と違い、この手法なら臭いもなく、ダイオキシンやフランが発生する心配もない。

全行程は自動制御され、殺菌作業が終わった廃棄物は冷却した後、2~3センチの大きさに自動で粉砕される。処理によって廃棄物の容量を小さくでき、埋め立てに利用しても周囲の土壌や水などの環境を汚染することがないという。

装置は、昨年11月にハノイ市ナムトゥリエム地区のUrenco13の施設に設置され、試験的に使用されている=写真㊦=が、動作は安定しているという。処理後の廃棄物の微生物試験でも、数値は国立衛生疫学研究所(NIHE)の基準以下におさまった。

Urenco13社のトン・ビェット・ズン副社長は、海外製品と比べても、「新型装置は遜色ない」と胸を張る。「私たちも、国立機械工学研究所も、試験利用の後、本格的な製品製造に入れば、全国の処理施設で使用してもらえると期待している」と話す。

装置は今後、ハノイ市や北部のいくつかの省の病院や処理施設などが導入する予定で、その後さらに、中部や南部のなどでも販売を展開するという。

開発に取り組んだエンジニアのグエン・バン・ビン氏は、「技術の獲得によって、処理作業を短縮し、維持のコストを削減した装置が開発できた。今後さらに多くの廃棄物処理業者に導入してもらえるよう、研究開発チームとして技術を改良したい」と話している。