日本の高専式教育、ベトナムの3大学で本格化 労働者の技術力向上ねらう

技術者を育成する工科短期大学などを管轄するベトナム商工省は、日本の高等専門学校(高専)を運営する国立高等専門学校機構と包括連携協定を締結し、技術教育の促進や産業を支える人材の育成に取り組んでいる。昨秋、ハノイ市の商工短期大学など3大学が試験的実施校に選定され、さまざまな工業研修が行われるなど日本の高専式教育が始まっている。

プロジェクト調整役の商工省が、試験実施校に選んだのは、商工短期大学(COIT)のほか、フエ工業短期大学(HUE-IC)とカオタン工科大学(CTTC)の3校。工業分野を筆頭に、ベトナムの人材育成全般において、突破口を見出すために、日本の高専にならった3年制または5年制の教育プログラムを提供している。昨年秋からの2020年度は、250人以上の学生が参加登録を行った。

ベトナムは、若い労働力人口が豊富であるにもかかわらず、アジア他国に比べて労働者の技術力が低いのが実情で、このために2018年のアジア調査では労働者の質ではアジア12カ国中第11位と低迷した。労働力の技術力の低さが競争力のなさにつながっているため、近年、労働生産性を向上させるために国際協力を仰いできた。日本の高専との提携はその一環だという。

今回、日本式高専モデルの実験校に採用された3大学では、企業と協力したインターンシップや共同研究などを活発に行い、教育訓練を多様化させた。商工省人材・組織開発局のグエン・テ・ヒュー副局長は、「新型コロナウイルスの感染拡大の影響はあったものの、ベトナムでの高専モデルの教育展開は大きく前進した」と1年間の活動内容を評価する。現在は264人の学生が、電機や電子、産業、メカトロニクスなどの分野で、教育訓練に参加しているという。

商工省の評価によると、試験導入している各大学では、訓練内容を日本の企業ニーズに即して実施しているほか、ベトナムの産業発展と国際統合に必要と思われる人材の育成も目指している。プログラムは前向きな進展を見せてはいるが、すでにベトナムに進出済みの日系企業のほか、他国からベトナムへ投資のシフトを考えている日本企業にも人材を供給するためには、国立高等専門学校機構は「企業と教育機関の協力をさらに強化して企業側のニーズを把握し、学生向けに適切なキャリア教育を行っていく必要がある」と話す。

提携以降、教育機関における職業訓練での日越協力は、ベトナムの中学校以上のさまざまな高等教育機関で実施されている。大手企業、特に日系企業が近隣にある学校では、卒業生の採用を促すために盛んに取り組んでおり、実際、多くの卒業生らがこれらの近隣企業に採用される傾向にあるという。