ベトナム政府はこのほど、火力発電所や化学・肥料工場から排出される灰、スラグ、石膏を、建設資材の原材料として再利用する首相指示を発出した。

◇各省庁が役割分担
首相指示第8号/CT-TTgでは、灰、スラグ、石膏の処理と利用ついて、設定した目標に達しておらず、消費と排出のバランスが取れていないと指摘している。大量の灰やスラグ、石膏がいまだ工場の敷地内に残され、増え続けており、多くの埋立地もあと数年で飽和状態になる。

こうした事態を受けて首相は、建設省と関係機関に対し、灰、スラグ、石膏の新しい用途の開発、建設資材に活用する際の技術基準や規則、指示の策定、セメント工場に指示して灰などの使用量を増やすことについて、各機関と連携して進めるよう要請した。


大量の灰やスラグ、石膏がいまだ工場内に保管されている

また、商工省を中心に、施設が排出した灰、スラグ、石膏の処理状況を検査し、施設内に保管される量が生産量の2年分を超えないようにしてきた。石炭火力発電所に対しては、燃料を節約できる技術と設備の導入を求めている。

天然資源・環境省は、建設資材の生産に灰、スラグ、石膏を使用するためのガイダンスを公布。さらに、法に基づいて鉱物を採掘した地域の環境に影響を与えることのないよう、灰などの処理に関する技術規則と指示も公表した。

拡大する責任
首相は運輸省には、公的資金が投入されるプロジェクトの投資家に対し、交通関連の案件では、優先的に灰やスラグを使用するよう指示することを求めた。農業農村開発省は、2022年末を目処に、石膏残渣(りん石膏)を肥料の原材料に使用する可能性について検討。さらに、灰、スラグ、石膏を工業利用する科学技術研究に対して、優先的に支援を行っている。


クアンニン省のタイン・トゥエン社は、マオケ火力発電所の灰とスラグを用いて建設資材を生産

首相指示では、省や中央政府直轄市の人民委員会に対し、火力発電所や化学・肥料工場向けの埋立地について、その受け入れ能力が、生産量の最大2年分であるもののみを認定するよう求めている。加えて、施設の所有者は、生産工程で排出する灰やスラグ、石膏の処理等を管理する責任を負う。

建設省は2018年と19年に、石炭火力発電所から出た灰やスラグを、道路整備に用いるための基準を発表した。これまでに、灰やスラグをレンガの添加剤に使用するため、17の国家基準が公表されている。