ベトナム政府は今月初め、新型コロナウイルスの感染拡大抑制策のひとつとして、「ワクチン基金」を創設した。国民に接種するコロナワクチンの調達と自国産ワクチンの開発・生産などに充てるとしている。このほど行われた式典で、ファム・ミン・チン首相らが広く協力を呼びかけ、さらに多くの企業や団体が参加して募金集めを行っている。

ベトナム保健省は7500万人分に相当する1億5000万回分の新型コロナウイルスワクチンを調達する計画。このほど行われた式典には、ファム・ミン・チン首相らが出席し、寄付を行った団体などが表彰されたほか、新たな資金援助の呼びかけがされた。

◇グリーンフィード、医療支援を拡大
資金提供をした企業のひとつである、グリーンフィード社は、ベトナム国内で、畜産飼料から食肉までを一貫して販売している。今回の呼びかけに呼応して、200億ドンを基金に供与した=写真㊤。ベトナムが早期に集団免疫を獲得できるように、との思いで募金を行ったという。

これまでにも、同社は、医療従事者やコロナ関連業務の従事者らに、無償で7000食あまりの食事などを提供。また、コロナ禍で社会的支援が必要な人々100万人に、健康でおいしい食事を届けたいとして、子どもの療育施設などにも、商品の寄付を続けている。

◇ペトロベトナムは基金に500億ドン寄付

ベトナムの国営エネルギー企業、ペトロベトナムは、同基金に500億ドンを寄付した。詳細を発表したペトロベトナムのレ・マイン・フン最高経営責任者(CEO)は、「ペトロベトナムは、コロナ抑制のため、これまでも各省庁や組織と協力してきた」と説明。同社やグループ企業の社員や労働者有志らも、コロナ制御とワクチン接種推進のために、新型コロナの発生以後、総計1000億ドンの寄付を保健省や地元自治体などに行ってきたことなどを紹介した。

フンCEOは「社員に加え、コロナ予防や管理に携わって、ペトロベトナムの安全で効果的な事業運営や環境維持に貢献してくれた医療チームにも感謝したい」と述べ、今度も寄付活動を継続すると、その意義を語った。

新型コロナの感染が再燃した4月以降、ペトロベトナムと参加企業は、感染対策の第一線となる医療施設や自治体などに数十億ドルの寄付を行ってきた。同時に、ペトロベトナム傘下の企業も含め5万6000人にのぼる石油ガス関連企業の労働者に対し、28億ドン分の消毒液など医療備品を供給した。さらに従業員に向けては、幅広い検査を実施しているほか、グループ内のすべての従業員にワクチン接種を行うために、関係省庁や医療施設と積極的に連携しているとした。

◇社員らが歩き、5億ドンの募金 ゼネラリ・ベトナム

企業独自で、新型コロナ対策を支援するための資金集めに乗り出す企業もある。イタリア系保険大手のゼネラリ・ベトナム生命保険社は、「ベトナム横断~愛の翼を広げて」と題した募金活動を展開。社員らが歩いた成果として、友人や知人らから募金を集めるというもので、この募金を含め、ゼネラリ・ベトナムは、総額15億ドンをコロナ対策支援として寄付した。

同グループが世界各地で同時展開した慈善事業のひとつ。ベトナム国内では、社員や関係者らがボランティアで参加し、今月7日から16日まで実施した。各ボランティアが一週間の期間中に3万5000歩以上歩いたり、相当する距離を自転車で走ったりする目標を掲げ、活動に賛同する家族や友人らから寄付を募った。

活動は、新型コロナの市中感染の急増によって、経済的に困窮する家庭が増えたことから、資金援助をしようと有志の間で始まった。特に感染が多いバクニン省やバクザン省で、集団感染した貧しい家庭の子どもたち約500人が隔離される事態となっていることから、子どもたちの治療や隔離施設の運営支援などのために、ベトナム児童基金(NFVC)を通じ、集まった5億ドンが寄付された。

これに加え、同社はベトナム政府のワクチン基金に対しても、企業として10億ドンを寄付。また、全社員のワクチン摂取費用を、自社で負担する方針も固めたという。

同社のティナ・グエン最高経営責任者(CEO)は、「この活動を通じ、われわれは3つの成果を上げることができた。困っている市民らの支援、社員の健康増進、そして人と人の間に距離を置く必要があるコロナにあって、社員同士や社員と市民のかかわりが生まれたことだ」と活動と、参加した車輪らを称えた。