新型コロナウイルスの世界的感拡大を背景に、農作物のインターネット上での販売が、農家にとって効率のよい持続可能な販売支援として注目されている。商工省は、感染予防のための移動制限などで従来のような販売ができなくなった農家などが、早急にオンライン通販を増やせるように、産地支援に力を入れている。

◇存在感増すデジタルプラットフォーム
ベトナム貿易促進局(VIETRADE)はこれまで、何年もかけて、インターネット上での電子商取引プラットフォームを活用した農産物販売の普及と促進を進めてきた。その計画は、思いがけない新型コロナの感染拡大によって、普及が大きく加速されることになった

今年6月6日、センドー(Sendo)、ヴォソ(Voso)、ティキ(Tiki)、ショッピー(Shopee)、ポストマート(Postmart)、ラザダ(Lazada)の、ベトナムの大手通販サイト6社がそろって、バクザン省特産のライチの販売を始めた。同省のライチが大規模で、システム化された方法で、オンライン販売されるのは初めてのことだ。ライチといえば、新鮮な果物を産直で都市部に運んで売るという伝統的な販売方法がこれまでの主流だったが、新型コロナの感染拡大で人の移動が寸断されたために、このような方式が採用された。

商工省とバクザン省商工局はライチの収穫期を前にした今年4月末、新型コロナ感染の第4波を受けて、ライチはじめさまざまな農産物をどう販売するかについて相談した。同省は、バクザン産のライチやその他の農産物について、関係部署に対し対面型の従来の販促活動に加え、オンラインでの販路開拓を急いで企画するよう通達した。

今年の5月25日には政令08/CT-BCT号が発効で、新型コロナ禍の農産物の国内消費が支援されることになり、流通に追い風が吹いたのに続き、商工省傘下のベトナム電子商取引・デジタル経済局(IDEA)が、農産物の生産者や販売者らが、さまざまなインターネット上の販売プラットフォームへの参加支援を関係部局に指示した。デジタル経済局のダン・ホアン・ハイ局長は、国が設立した「国立オンラインストア」に参加する農産物の販売業者らを優先して、支援にあたったという。

一方、商工省とベトナム貿易促進局は、ソンラ省人民委員会とショッピー、ポストマートの三者と、協力協定に調印。ソンラ省産のスモモやリュウガン、マンゴ―などの果物数百トンを通信販売するためで、ショッピーのサイトでは、初日だけでソンラ産スモモ約1トンが売れたという。

ベトナム北部ハイズオン省のタインハー地方はライチの名産地として知られるが、同地方のライチは5月14日、国内でも有数のオンライン通販サイト、ラザダで発売が始まった。貿易促進局によると、ネット販売デビューは、農産物販売を手掛けるレッド・ドラゴン社に加え、促進局とハイズオン省商工局、農業農村開発局なども支援。販売されたライチは鮮度を重視して、ハノイやホーチミンの顧客であれば、購入から4時間以内に手元へ届くことを目指したという。

商品を直接購入できる各種のオンライン販売プラットフォームは、農産物が農園などで栽培されている様子をライブ配信され、消費者向けに大きな宣伝効果もあった。 ある通信販売会社では、販売開始してから12時間で30トン以上ものライチの注文があったというほど、効果はすさまじかった。

貿易促進局のブー・バー・フー局長は、「農産物のオンライン販売は、地域の名産品や特産品の新たな、持続可能な販売方法として、徐々に発展している。国内企業のデジタル化にも寄与し、『ベトナム産品購入促進キャンペーン』の人気をさらに高めることにもつながるだろう」と自信を見せる。貿易促進局では、購入者が産地までの情報をたどることができる独自のトレーサビリティシステムを開発しており、これが企業や農家の品質管理や販売先までの確実な配送の支援にも役立っている。また、消費者にとっても、農産物についての重要な情報収集源になっているという。

◇持続的な販売を求めて

開始からここまで、農産物のインターネットなどでの販売は、成功を納めてきた。だが、この流れを一時的な流行に終わらせず継続させるには、まだ課題がある。通販サイトのヴォソを運営するベトテルポスト系のインターネット通販会社、ワンメンバー社のチャン・チュン・キエン社長は、「農産物は、鮮度が落ちることから、(インターネット上での)商品取り扱い時間が短く、日々の価格の上下も大きい。また生鮮商品は、家電製品や電子機器などの商品に比べると保管も輸送も極めて難しい」と指摘する。さらに、ベトナムの生産者は大規模経営が少なく、家族など小単位で機能しているために、商品の品質の均一化が難しく、包装や保存の技術も遅れていることも課題となっている。

貿易促進局は、これらの問題を解決するには、政府と企業、地域との間での協力が不可欠だと主張する。生産者は、ベトナムが自由貿易協定を結んでいる国が販売先となる場合は特に、輸出先のさまざまな基準を遵守しなければならず、加えて、消費者のし好を研究して市場を多様化させるために、生産を改善する必要もある。また、自分たちの製品をブランディングし、生産流通チェーンに積極的に参加する努力も必要だ。貿易促進局は、全国貿易促進プログラムの物産展などでブースを開設し、インターネット通販などで商品を販売したい事業者など情報提供するなど、今後も継続的な支援を続けていくとしている。