政府、新たなコロナ救済策実施を発表 形式主義は排除、迅速な支給実現

ベトナム政府はこのほど、新型コロナウイルス感染の第4波によって大きな打撃を受けた労働者と、雇用する企業などのために、総額26兆ドン(11億3000万ドル)規模の救済策の実施を発表した。昨年の感染拡大以降、政府による救済プログラムの実施は2回目。困っている人たちを迅速に救済できるよう、申請手続きなどを大幅に簡略化させた。

◇新たな利点
今回の救済パッケージ実施は、ダオ・ゴック・ズン労働傷病兵社会問題相が今月はじめに発表。10項目の具体的な支援策について、適用のための詳しい条件や手続きなどが明らかとなった。昨年4月に実施した、新型コロナの影響による生活困窮者や経済的困難に陥った企業に対する総額62兆ドンの直接支援に続くものとなる。

労働傷病兵社会問題省のレ・バン・タイン副大臣によると、この68 / NQ-CP号決議は、新型コロナ対策と経済発展の二重の目標を達成するように設計した。たとえば、雇用者企業が支払う労働災害保険の加入料金を、0.5%から0%に引き下げ、給付はこれまでの内容を維持するなどの項目が盛り込まれ、雇用者の保険料負担が軽減される。雇用企業は、これで浮いた金額を、雇用する労働者への支援や給与に充当することができる。保険加入者であれば、外国企業であっても、対象となる。

また、新型コロナに感染者への支援としては、感染によって隔離された感染者(F0カテゴリーとよばれる)と濃厚接触者(F1カテゴリー)は、最大21日間、1日8万ドンの食費が支給される。45日以内の治療費も各省が負担し、対象者が子どもの場合は、追加で100万ドンが提供される。感染拡大の影響や隔離などのために仕事を一時中断しなければならない場合、妊娠中の女性と6歳未満の幼児を養う母親は、生活支援として100万ドンを受け取ることができる。

コロナの状況下で仕事が激減した芸術家や音楽家など「第4種プロ技能者認定」を受けた約2000人のほか、観光業に携わる有資格のツアーガイドらも対象とされた。ダオ・ゴック・ズン労働傷病兵社会問題相は、「この支援パッケージは、可能な限り門戸を広く開いている」と説明した。

◇支給は迅速に、手続きは簡単に
労働傷病兵社会問題省に対しては、政府が、「支援が、非正規雇用者から露天商まで、必要としているあらゆる人々の手に届くように」と強く指示。そこで今回は、可能な限り、申し込みの手続きの簡略化と、支給までの時間の短縮が図られており、その成果を、ズン労働傷病兵社会問題相は「革命的だ」と評した。

前回の支援時、企業は、社員らの雇用維持に必要な給料支払いの資金借り入れだけでも、さまざまな厳しい要件があった。しかも、ベトナムの商業銀行が借り入れ審査を行うのが慣例的に、毎月5日と限定的であったため、場合によってはひと月近くも審査を待つ必要があった。

ズン大臣は、ベトナム国立銀行頭取とベトナム社会政策銀行(VBSP)頭取と交渉を重ね、複雑な手続きを排除することで申請から4日以内に手続きが完了し、その後3日以内に資金供給を実施することで合意した。 これによって企業は、従来は40日近く待ってようやく資金を手にしていたのが、1週間以内に支援が手元に入るようになった。

手続きは大幅に簡素化されるが、救済措置の実施で不正がないよう、祖国戦線、労働組合、その他の関連組織が厳しく監督検査を行うという。

今回の救済決議68 / NQ-CP号が、新型コロナの感染が大規模で発生し、多くの産業分野に影響を与えつつある第4波のこの時期に実施されたことは、絶好のタイミングだというのが多くの経済専門家らの意見だ。4月下旬以降、感染が拡大する一方で、変異株が主流になるなど、状況が複雑化、ベトナム全土で企業と雇用される従業員の両方を悩ませてきた。今年の第2四半期、新型コロナの影響で職を失ったり、労働時間が短縮されたりした労働者は1280万人にのぼり、第1四半期よりも370万人も増えた。

「あらゆる人々が、特に非正規雇用の労働者らが、支援を待ち望んでいる。支援がこれ以上遅れれば、われわれ政府機関や地方自治体は大いに罪悪感を持たねばならないような、危機的状況だ」と、ズン大臣は語った。